地元旅館とタイアップして限定フィギュアを製作

2011年7月に発売したのが「諏訪高島城」(200分の1スケール)。同社の高精度の金型技術を駆使した城郭のプラモデルだ。ところが、ここで意外なものが話題になった。城とセットにしたオリジナルキャラクターのミニフィギュアだ。諏訪高島城だけでは知っている人も少なくインパクトも弱い。何か一緒に出したほうが相乗効果も出て、諏訪市のPRにもなると考えたのである。これが現在の同社の屋台骨「諏訪姫」だ。

山口晃・ピーエムオフィスエー社長

人気を広げるため、同社では自社で販促イベントを企画し、ファンを集めた。さらに約100万円で諏訪姫の着ぐるみを作成し、県内のさまざまなイベントへ積極的に参加するようにした。すると、市民の間で諏訪姫が話題となり、12年6月には地元・諏訪市の公認も得た。

こうしたご当地キャラは長野県内のほかの自治体にも広がっている。松本市の「くのいち縄手」、上田市の「小松姫」、塩尻市の「玄蕃サラ」、茅野市の「女神涼」、岡谷市の「岡谷まゆみ」、下諏訪町の「阿弥陀万里」……。「ゆるキャラ」が話題にならず、苦戦する自治体もあるなかで、これだけのニーズがあるのは特筆すべきだろう。

「やはり企業は地元に受け入れられ、応援してもらうことが大事だと思うんです。諏訪姫にしても、販売は基本的に長野県に限定しています。要するに長野県に来てくださいということなんです。旅館ともタイアップし、その旅館でしか買えない諏訪姫フィギュアもつくりました。しかも、旅館ごとにバージョンが違うのです」(山口社長)

一連のタイアップフィギュアは数量限定で、基本的に再販はしない。このため、フィギュアを買うために旅館に泊まる諏訪姫ファンが続出しているという。山口社長によれば、今後も地元の企業や商店とタイアップした諏訪姫フィギュアを次々出していく方針だ。ちなみに数量限定にする理由は、プレミアム感を演出するだけでなく、在庫を持ちたくないという事情もあるそうだ。

「フィギュアやプラモデルを始めてよかったのは、機械が常にフル稼働状態になったことです。しかも、それらの商品は納期が遅れてもお客さまから文句を言われることがほとんどない。納期に間に合うことよりも、いい商品をつくることを優先してほしいという人が多いんです」(山口社長)

山口社長は「長野県のホビー会社はうちしかないので、地元の企業や商店、自治体とタイアップしながら着実に成長していければいいと思う」と話す。ピーエムオフィスエーの活路には、地方の中小企業が発展していくための一つのヒントがあるのではないだろうか。

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