課題の第二にあげたのが、「ウェブ上にたやすく拡散してしまうフェイクニュース」の問題だった。

バーナーズリー氏はこう指摘する。

<今日、大半の人々は一握りのソーシャルメディアや検索エンジン経由で、ウェブ上のニュースや情報を見つける。それらのサイトは、私たちが表示されたリンクをクリックすることで、より多くの収益を上げる。そして、私たちに何を表示するかは、絶えず収集している個人データから学習したアルゴリズムに基づいて選ばれている。その結果、これらのサイトが表示してくるのは、私たちがクリックするだろうと見越したコンテンツだ――すなわち虚偽情報や“フェイクニュース”だ。驚くべき、ショッキングな内容で、私たちのバイアスに訴えかけるようにつくりあげられ、野火のように広がっていく。さらに、データ科学とボットの軍団の活用によって、悪意を持った勢力は、システムを悪用して虚偽情報を拡散させ、経済的、政治的利益を手にすることができるのだ。>

『信じてはいけない――民主主義を壊すフェイクニュースの正体』(平和博著・朝日新聞出版刊)

そしてバーナーズリー氏が第三の課題としたのは、このようなデータ分析が2016年の米大統領戦でも選挙広告のターゲティング配信に使われていた、という点だ。

<米国やそれ以外の世界中で、政治広告が不正活動に利用されているケースがある。有権者をフェイクニュースに誘導したり、投票に行かせないようにしているのだ。>

選挙で、5万種類ものカスタマイズをし、個々のユーザーにターゲティングした政治広告を打つ。「これが民主主義か?」とバーナーズリー氏は述べる。

そして、他の対応策とともに、フェイクニュース対策についても見通している。

<私たちは虚偽情報と闘っていかなければならない。グーグルやフェイスブックなどのゲートキーパーが問題に取り組むよう努力を続けるように後押ししながら、何が“真実”かを決めるような、中央集権組織はつくり出さぬようにして。>

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