ここで興味深いのは、高級車の代表格であるメルセデス・ベンツがベスト10に入っていない点だ。

「サービスの平均的な構図は、30代後半以上のオーナーが、20代から30代前半のユーザーにクルマをシェアしているというものです。それを考えると、『若者のベンツ離れ』というか、ベンツに対する敷居の高さがあるのかもしれません」

メルセデス・ベンツは、2010年以降小型車のラインナップを拡充しているほか、『新世紀エヴァンゲリオン』で知られるアニメーター・貞本義行がキャラクターデザインを手掛けたアニメCMや、「マリオ」を起用したCMなど、サブカルチャーを取り入れたマーケティングに力を入れている。そうした動きは、裏を返せば、若年層におけるブランド力低下への危機感の現れともいえるだろう。

「ただ、20代の学生の方がエニカ上でベンツを借りて乗っているケースは見られます。これまでのクルマ市場では考えられなかったこと。若いうちにベンツに親しむ機会が増えれば、生涯購入率は上がると思います」(大見氏)

ただし、同じ輸入車でも、ランボルギーニやフェラーリといったスーパーカー寄りのメーカーは保険適用外のため、エニカでは登録ができないようになっている。

エルグランド、ステップワゴン…価格で強いミニバン

ランキングのもうひとつの特徴は「ミニバン人気」。大見氏は「他サービスで借りるより安いからではないか」と分析する。

個人間カーシェアリングサービス「Anyca(エニカ)」

「輸入スポーツカーが『憧れ』で人気を集めているのに対して、ミニバンは『実用性』や『経済性』がウケているのだと思います。なにせ24時間で5000円前後と、リーズナブルに使用できますから」(大見氏)

こうした個人間カーシェアリングは、オーナーからすれば、乗らないクルマがお金を生み、維持費の助けにもなるというありがたいサービスだ。しかし一方で、大事な愛車を見知らぬ人間に貸すことに抵抗はないのだろうか。

「むしろオーナーさんの中には『バッテリーが上がってしまうのが心配だから乗ってほしい』『貴重な車種だけど、だからこそクルマ好きに乗ってほしい』といったご意見もあるほどです。もちろん、クルマですからキズや事故とは無縁ではないので、そこは本人確認の強化や、キズ確認を円滑にするアプリの用意、24時間単位の保険の導入、修理サポートなどで安心・安全を担保しています」(大見氏)

サービスを使う内に、ユーザーの中からも「エニカを利用すれば、維持費を安くおさえながら憧れのクルマを所有できる」と考えて、新しいオーナーが生まれることが最終的な狙いという。クルマ好きの裾野を広げるこうしたサービスは、今後もぜひ広がってほしいものだ。