ゆったりと切れ目なく動く独特の型

見よう見まねで、型を練習。正宗太極拳には99の型があるが、動きに切れ目がなく30分以上かけてこなしていく。

さて、さっそく太極拳を体験してみることに。同連盟では、初心者クラス、健康クラス、武術クラスがある。初心者クラスでは99まである正宗太極拳のうち、基本の14番までの型を身につける。健康クラス、武術クラスでは最初から99型の習得を目指すが、武術クラスでは、さらに「推手(すいしゅ)」という対人練習が入ってくる。今回は取材ということで、特別に武術クラスを体験させてもらった。(※通常、武術クラスは見学のみ可。健康クラスと初心者クラスは体験可)

20人ほどの生徒さんが集まっていただろうか。8割ほどが女性で、外国人の姿も。道場はどこかリラックスした和やかな雰囲気が漂っていた。後から聞いたところによると、太極拳では「力を抜く」ことが何よりも重要なため、緊張しない雰囲気づくりも大切なのだという。

王樹金老師の写真に向かって、みんなで礼をすると、まずは体をゆっくり動かしていく。関節や筋を伸ばし、気を通りやすくする「抜筋骨(ばっきんこつ)」というエクササイズだ。かけ声もなく、音楽もかけず、道場には衣擦れの音だけが響く。しばらくすると、突然、先生がポーズをとったままフリーズしてしまった。あれ? あれれ? もしもし?

5秒、10秒経過、20秒経過(体感)……。どうしちゃったのだろうか。きょろきょろ周りを見渡しても、みんなピタッと静止している。しばらく経つと動き出し、また静止……。これを8回ほどやったところでようやく終了した。その間、姿勢はずっと中腰。太ももがピクピクしてきた。

実は、これが「気功」だった。そうか、みんなあのとき"気"に集中していたのか。私はすっかりあちこちに気をまき散らしていた。

さて、ここからが太極拳。萩澤先生はくるっとこちらを向くと、「最初は難しいかもしれませんが、とりあえず真似してみてください」と言い、ゆっくりと体を動かし始めた。なめらかで優雅で、うっとりするような動き。先生の一連の動作に思わず目をみはった。

私も見よう見まねで、とりあえず真似をしてみる。もちろん、無言、無音、中腰。クルクルまわりながら、足を上げたり腕を上げたり。一体自分が何をやっているのか、さっぱりわからない。ただ、先生の動きとはまったく違うことだけはわかる。でも体を動かすうちに、だんだん“舞っている”かのような気分になってきた。そうか、太極拳ってダンスみたいだ。

ただ、ダンスと違うのはリズムもカウントもないこと。どうやらこの一連の動きの一つ一つが太極拳の型ではあるようだが、どこからどこまでが型なのか、さっぱりわからない。体を動かしてはいるが、何で自分がそういう動きをしているのかわからない。宇宙の無に放り投げだされた気分だ。そのうち吹っ切れ、意味なんてもういいや、「とりあえず舞うのだ!」と思うと、だんだん頭が空っぽになり、気持ちよくなってきた。