エンジニアとデザイナーが一体となるには

アップルは、創立当初からエンジニアリングとデザインを統合しUXの向上に取り組んできました。1983年に、一般向けのパソコンに初めてマウスを使ったグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)を導入し、使いやすさを劇的に向上させました。その姿勢はiPhoneにも受け継がれています。また、創業者のスティーブ・ジョブズはアートへのこだわりが強く、独自の信念をもとに、常に新たな価値を提案し、競合商品とは一線を画してきました。

ダイソンも、エンジニアリングとデザインの統合に独自のアプローチで取り組んできた企業です。統合的価値を創出するにはエンジニアとデザイナーの共創が必要です。しかし、客観的な視点から理詰めで考えるエンジニアと、人間の主観的な感性を重んじるデザイナーでは、問題解決の方法が異なるため、共創は容易ではありません。この問題を解消するため、同社では商品開発に取り組む主要な技術者の多くを、デザインとエンジニアリング両方の教育を受けた「デザインエンジニア」にすることによって、使いやすく見た目もいい商品の開発に成功しています。

「魂動」のデザイン哲学を追求

マツダは画期的なエンジンとデザインで高い顧客価値を実現する。

日本企業において、SEDAモデルによる統合的価値づくりを実践して成功しているのがマツダです。意味的価値を重視し、エンジニアとデザイナーが一体となって商品開発に取り組んでいます。さらに、サイエンス領域では従来の常識にとらわれない画期的なエンジン(スカイアクティブ)を開発、アート領域では生命感を感じさせる「魂動」のデザイン哲学を追求し、高い顧客価値を実現しています。

このような統合的価値を創出するには、基礎研究から設計開発、製造、デザイン、マーケティング、営業まで、すべての分野が共創することが求められます。かつて、日本の製造企業は設計開発と生産技術をうまく統合させることで、生産性や品質において国際的な競争優位を誇りました。こうした機能的組織の壁を越えた協業を、今後はエンジニアリングとデザイン、さらにはマーケティングや営業との間でも進めていく必要があります。同時に、意味的価値を含めた統合的価値を創出できる人材の育成・登用や、その価値を評価・意思決定できる文化の構築も求められます。また、教育のあり方も見直すべきでしょう。根強く存在する理系と文系の垣根を取り払い、エンジニアリングとデザインの両方を学べるような環境が求められます。

(構成=増田忠英 写真=時事通信フォト)
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