相談役制度の廃止した企業も

一方で、企業統治強化の動きを先取りした企業も表れている。今年、J・フロントリテイリングや日清紡ホールディングスなどは相談役の廃止を打ち出した。しかし、こうした対応は一握りに過ぎず、制度を“温存”する企業が圧倒的だ。

実際、経産省が大企業約2500社を対象にした調査では、企業の約6割は相談役・顧問が在職中で、日本企業には相談役・顧問制度が深く根付いている実態を裏付けた。さらに相談役・顧問の役割は「現経営陣への指示・指導」が最多の回答となり、経営への隠然とした影響力をうかがわせた。

経産省の有識者研究会はこの調査を受けて今年3月、企業が相談役の職務内容や就任の経緯などを開示すべきとする報告書(「CGS研究会報告書」)をまとめ、今回閣議決定した成長戦略に盛り込んだ。企業統治向上に取り組む日本取締役協会の会長を務めるオリックスの宮内義彦シニア・チェアマンは、相談役設置について「全部が悪いというわけでもない。(是非は)企業のガバナンスの主体が判断すべき」と指摘する。

他方、議決権行使助言会社の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズは、今年の株主総会で 機関投資家に相談役・顧問制度に反対を推奨する。経済同友会も5月に同制度の廃止を提言した。6月は3月期決算企業の株主総会が集中する。世界で通用する企業統治が求められるなか、相談役・顧問の存在は果たして「無用の長物」か。改めてそのあり方が焦点になりそうだ。

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