そして3つ目が政治プロセスや行政システムへの介入である。電子化が進む行政システムに不正にアクセスして、データを破壊・改ざん、あるいは機密情報を盗み出したり、システムダウンなどの障害を引き起こす。ロシアゲート問題は政治プロセスへの介入そのもので、クリントン陣営に不利な情報をハッキングして暴露したり、ソーシャルメディアやSNSを活用してクリントン氏を貶めるようなディスインフォメーション(偽情報)を拡散した。つまり、あることないことをまき散らして、選挙戦に少なからず影響を与えたのだ。また米大統領選挙では電子投票システムそのものがサイバー攻撃にあって、一部の州で票数が不正に操作された可能性も指摘されている。ロシアが情報戦で政治プロセスに介入した事例は事欠かない。ウクライナ領のクリミア自治共和国、セヴァストポリ特別市を併合した際には、反ウクライナのディスインフォメーションを拡散するなどして、ウクライナからの独立、ロシア編入というクリミア住民の世論を先導した。旧ユーゴスラビアの構成共和国で数少ない親ロシアのモンテネグロでも昨年の議会選挙でロシアが介入して、NATO加盟を阻止するためEU寄りの現政権の転覆を企てたと言われている。昨年、ドイツのベルリンで13歳のロシア系ドイツ人の少女が難民集団から性的暴行を受けたというニュースから火が付いて、大規模な難民反対デモに発展した。難民に寛容な政策を採っていたメルケル政権は一時逆風にさらされたが、後に少女への暴行事件はロシアがリリースしたフェイクニュースだったことがわかった。かつては親密だったロシアのプーチン大統領とメルケル首相の関係だが、メルケル首相がロシア制裁で指導力を発揮してからは冷え切っている。

代わってプーチン大統領に近づいたのがフランス大統領選挙で有力な対抗馬にのし上がったマリーヌ・ルペン氏で、選挙戦が目前の3月下旬にクレムリンを訪問してプーチン大統領から大歓迎を受けた。フランス大統領選挙でもロシアがフェイクニュースやディスインフォメーションを拡散したり、エマニュエル・マクロン新大統領の陣営にハッキング攻撃を仕掛けたと言われている。これはプーチン大統領がさっそくベルサイユ宮殿にマクロン新大統領を訪問したことで、ぎこちないながらも表向きのわだかまりは埋められたように見える。一方、9月にはドイツの総選挙が控えているが、すでにロシアが暗躍しているに違いない。