人生100年時代 生きれば生きるほど通帳は「0円」に近づく

がんの手術は無事終えたとはいえ、再発リスクもゼロではない。つまり、お金はこれからも必要だ。そんなときに「無収入」に直面したベッドの上で、ふと思ったことがある。

「定年退職などでリタイアした人の気持ちって、もしかしたら、こういうことなのかもしれない」

やっと働くことから解放されても、年金支給開始はまだ数年先だとする。定期的な収入がなくなり、日々の生活は手持ちの預貯金を食いつぶしていかなければならない。いくばくかの退職金も会社から出たが、資産がただ目減りしていくことがこんなにも不安で恐ろしく感じるものなのかと。

そして、この心理は年金が支給されてからも、あまり変わらないかもしれない。なぜなら、所得税、住民税、介護保険料、健康保険料といった税金・保険料の負担が少なくないことが主な原因で、赤字家計になっている高齢無職家計(年金のみが収入)が多いからだ。

▼定年退職のリタイア組も預金が減る恐怖を味わう

生きれば生きるほど、通帳の数字は確実に小さくなる。もっと言えば、0円に近づく。これはどう考えても精神衛生上よろしくない。

現役世代なら健康にあれば、何とか働いて収入を得ることもできるだろう。また一度リタイアしても再就職すればいいと思うだろう。しかし、高齢者の雇用ニーズが高まっているとはいえ、家庭や健康上の理由で働けない人もいる。

ある程度の資産を持っていたとしても、あとどれくらい生きるかわからない。何しろ昨今では「人生100年時代に備えよ」と言われているのだから。それに、親や自分の介護・認知症の問題もある。長生きリスクを抱えて、これから先、どうすれば良いか途方に暮れている人も少なくないのではないか。

それでは、このような事態に陥らないようにするにはどうすれば良いのだろうか? リタイア直前になって対策を始めても遅い。やはり、それなりの準備が必要だろう。