【塩田】代表就任の際、二重国籍問題が浮上しました。

【蓮舫】そもそも私は日本人です。ただ、私の高校生のときの曖昧な記憶に頼った発言をしたことが、結果として混乱を生じさせてしまったことは、本当に申し訳ないと思っています。聞かれたら、何度でも説明する責務が私にはあります。

私の国籍は日本のみです。弁護団とも丁寧な打ち合わせをしながら、すでに国籍離脱の手続きは済ませています。台湾籍放棄手続きを行い、昨年の9月13日に台湾の駐日代表処から正式に離脱証明書を受領しています。その後、9月26日に住居地の区役所に外国国籍喪失届の提出をしましたが、10月7日に不受理となりました。台湾当局が発行した国籍喪失許可証は、一般的な戸籍事務として受理されないことが理由でした。日本政府として、台湾籍を「一国籍」として扱わないため、戸籍実務として二重国籍と認めていないのです。そこで、法務省からの指導もあり、同日、国籍選択宣言手続きを行い、それにより全ての手続きが完了しました。

【塩田】自身の二重国籍問題が注目を集めたことをどう受け止めていますか。

【蓮舫】曖昧な記憶に基づく私の発言が一貫していなかったことで、誤解を生み、ご心配をおかけしたことについては、大変申し訳なく、忸怩たる思いです。他方、そうか、国籍に対して、強い思い、すごく熱い気持ちの人がいて、声が大きいということもわかりました。私は04年の初当選のときから一貫して蓮舫という名前でやっています。父の出身が台湾と言って国民の負託を受けています。民進党には白真勲さんもいるし、かつてに比べると、政治家になるハードルは随分、低くなっていると思います。人口減少の時代を迎え、国の持続可能性を考えたとき、どういう国がいいかという点で、私たちは党の綱領で「共生社会」を目指していますので、多様性は認めていくべきだと思います。

貧困の連鎖を何としても止めたい

【塩田】なぜ政治家を目指したのですか。

【蓮舫】仙谷由人さん(元官房長官)からのお誘いです。テレビのキャスターだったとき、私はテレビによる行政監視をと思い、特に子どもの問題を扱っていたので、仙谷さんに「その点に思いがある」と言ったら、「政治の内側でやったほうがよっぽど社会は動く」と言われ、気持ちの中でストンと落ちたんです。キャスターで田原総一朗さん(評論家)とも一緒に番組をやっていましたから、政治家と交流がありました。仙谷さんもその一人です。

 もともと政治は汚いというイメージしかなく、興味も関心もありませんでしたが、仙谷さんから「政治は中から変えられる。自民党でなくても実現できる」と言われたのはものすごく魅力的でした。テレビの世界では、スポンサーの都合で番組の予算が削られる時代が続いていて、ドキュメンタリーやロケに日数を要するような硬い特集番組が受け入れられづらい風潮があり、子どもの問題を扱うのは難しくなっていたので、「中でやったほうがいい」というのは、そのとおりだなと思った。それが政治家の道を選択した理由です。

【塩田】政治家としてこれだけは達成したいと思っている目標は。

【蓮舫】食べられない子どもをなくしたい。豊かといわれる日本で「子ども食堂」の開設が後を絶たない。貧困が目に見えない時代になって、目で見て貧乏とわからないとき、夏休みが終わると、痩せている子どもたちがいる。学校の先生は、ご飯を食べられているか、いないか、わかっている。戦後70年以上を経て、社会の分断があり、その被害を子どもが一番受けています。子どもにこだわって、最初に本会議で質問したのが児童虐待防止の改正案でした。子どもの問題を勉強したとき、日本は子どもに対してなんて手が届いていない国だろうと思いました。社会保障給付は高齢者が約7割で、子どもは5%です。今、そのツケが貧困の連鎖を生んでいます。ここを何としても止めたい。

蓮舫(れんほう)
民進党代表
1967(昭和42)年11月、東京都生まれ(49歳)。貿易業の台湾人の父と日本人の母の長女として生まれる。青山学院大学法学部公法学科卒業。大学在学中に音響機器メーカー・クラリオンのキャンペーンガール「88年度クラリオンガール」に選ばれる。テレビのワイドショーなどに出演した後、93~95年にテレビ朝日の報道番組「ステーションEYE」のメインキャスターを務める。93年に結婚。95~97年に北京大学に留学。2004年7月の参院選に東京選挙区から民主党公認で出馬して当選(以後、参議院議員3期)。09年10月、民主党政権で内閣府が設置した事業仕分けワーキンググルーブで農林水産省・文部科学省・防衛省担当となり、「仕分け人」として活躍して注目された。10年6月に菅直人内閣で内閣府特命担当相(行政刷新)に就任。11年9月に野田佳彦内閣でも内閣府特命担当相に起用された。民主党幹事長代行、代表代行を経て、16年9月の民進党代表選で前原誠司、玉木雄一郎を破って代表に就任。民進党では野田グループ所属。1男1女の母。
(撮影=尾崎三朗)
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