代替技術の普及で使命を終えたMP3

このような事情もあり、特に2000年以降、各企業はMP3を使いつつも、代替技術へと手を伸ばす例が増えていった。

現在MP3に変わり、音楽データの配信に広く使われている「AAC」は、MP3より音質が良い上に、MP3に比べ特許ライセンス形態が明解で利用しやすい。「Vorbis」「FLAC」といった、仕様をオープンにし、特許使用料が発生しないファイル形式も普及している。ある意味、MP3はすでにその使命を終えているのだ。

そんな中、フラウンフォーファーはMP3のライセンス提供を「終了」した。今後、フラウンフォーファーが持つMP3関連特許に関わる技術を使っても、同社から請求されることはない。

MP3にはさまざまな関連特許があるが、開発から時間が経過し、特許による保護期間は続々と終了している。その最後のものが終わったのが「2017年2月」と言われている。そのため、フラウンフォーファーは正式にMP3の特許ライセンス事業を終了したのである。

これによる悪影響を受ける人は、おそらく誰もいない。かといって、非常に大きな利益を得る人がいるか、というとそれもいないだろう。すでに代替技術が多数存在するからだ。フラウンフォーファー以外の企業がMP3関連特許を主張する可能性はゼロではないが、その時は現在と同様、代替技術を使えばいいだけだ。おそらく問題が発生することはあるまい。

しかし、MP3という歴史的技術を使ったソフトウエア開発のリスクがさらに軽減されたことは間違いない。改めて「MP3圧縮ソフト」を作るところも出てくるかもしれない。過去のファイルを使える基本的な形式として、MP3はこれからも存在していくことだろう。

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