任せる、頼るマネジメントスタイルに

そんなつまずきはあれども同期のなかでは昇進が早く、入社11年目の2002年に広報企画部長に就く。このまま広報かと思ったら3年後、また異動の声が。今度は新設されるIR室の室長(執行役員)だ。

長年、広報を担当しマスコミとの関係づくりもできていたので、「エッ私?」という感じだったという。投資家やアナリストの質問に答えられるように、勉強しなければいけないことがたくさんあった。

(上)広報でさまざまな経験を積む(下)IR室を立ち上げ苦労が続く

「決算説明会の前は朝の4時、5時までパワーポイントで資料をつくっていて、このまま私が倒れても誰も気づかないんだろうなって、ちょっと切なくなりました(笑)」

初体験のIRもしばらくたつと、投資家やアナリストは資料の数字の詳細よりも、派遣法や業界の流れを知りたがっていることに気づいた。それは広報をやってきた仲瀬さんの得意分野。自信を持ってIRの仕事に向き合えた。

ただ、広報の十数年とIR室の4年のキャリアに対する自信がマネジメントを狭くしてしまった。

「自分で悩みながら一生懸命仕事をしてきたので、部下がその場しのぎでウソをつくと徹底的に追い詰めました。それで泣かせてしまった男性社員も(笑)。とくにIR室は自分で一からつくりあげたという自負があったので、そのときの部下には一番厳しく指導したと思います」

仲瀬さんは、自分の経験だけでマネジメントスタイルをつくってしまうのは「女性にありがち」と言う。自分もそのわなにはまった。そんな仲瀬さんにとって、次の異動が転機となった。10年、IRと財務経理の両方を担当していたCFOの後任になったときだ。仲瀬さんには経理の経験は皆無。一方で部下は精通している。

「それまではできなかった、任せる、頼る、お願いするができるようになりました」

一皮むけたマネジメントで経営の一翼を担う。

■Q&A

 ■好きなことば 
良い顔の良い仲間(誰と仕事するかが大事)

 ■趣味 
ショッピング、映画・ドラマ観賞

 ■ストレス発散 
みんなと飲みに行くこと

 ■愛読書 
ハリー・ポッターシリーズ

撮影=澁谷高晴