営業で丸2年がたった頃、広報への異動を告げられる。営業が楽しくなってきたところだった。仲間もいる。研修をやりたいとは言ったが、広報とは言わなかった。

「支店長に『断っちゃダメですか』と言って、叱られてしまいました」。またもしぶしぶ広報へ。対外的な報道対応と、社内報などの社内広報の両方を受け持つことに。

筆記具。IRを担当するようになってから、投資家やアナリストからどのような質問が来ても対応できるように、資料をつくり、ハイライトをしたり、補足情報を細かく加えて頭に入れる。

知らない世界なので一からの勉強だったが、「先輩の姿を見ていると結局、お客さまに商品を売るか、メディアの方に会社を売り込むかの違いはあっても、基本的には営業の仕事なんだなと思いました」。案外すんなりと新しい仕事になじめた。だが、異動して間もなく、社内報の仕事で忘れられないミスをする。

社内報は社員だけでなく派遣スタッフにも配っていて、仲瀬さんは派遣スタッフ向けのプレゼントコーナーを担当していた。当時、グループ会社が化粧品などの並行輸入品を扱っていた。それが派遣スタッフへのプレゼントとなる。グループ会社の担当者から商品の写真や問い合わせ先などのデータをもらって、仲瀬さんがまとめる。いつものように刷り上がりを担当者のところに持って行ったら応募先のFAX番号が違うことが判明。元データが間違っていたのだ。あわてて正誤表を印刷し、それをカットして2万部に差し込む作業をたった1人で夜中までつづけた。

「私の間違いじゃないのにとすごく悔しかったんです。でも、よく考えてみると一回、FAXを送ってみればよかった」

最終責任の重さをかみしめた。