何より根拠は、心の支えになる。交渉の最後の3日間、膝を交えて話し合っても折れない相手。「安売りするくらいなら、白紙に戻して日本に帰る」とダルビッシュにも伝えていた。

「根拠があったから、30日に及ぶ交渉期間中、姿勢を崩しませんでした。結局、最後の数時間で球団が折れて、契約に至ったんです」。最終的に野村氏は最初の提示の2倍近い金額で交渉を勝ち得た。

しかし、相手は海千山千の球団経営陣。途中で心が萎えたりしないのか。

「代理人は基本的にネガティブシンキングだから、大丈夫。交渉の場で一番パワフルな言葉は『NO』で、それを言われた場合の別プランを常に準備しています。『NO』と言われてすぐ心が折れる人は、ポジティブシンキングすぎるんですよ」

ラスベガスでギャンブルをやっても、勝ったらすぐやめてしまうという野村氏。「僕、小心者なんです」と笑みを見せた。

【交渉テク】
金額は根拠を持って提示し、妥協なし
常に悲観的視点から別プランを準備する
(撮影=菅原ヒロシ)
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