ひらめきではなく努力の軽量化

ここからは具体的に、どうやって軽量化したのかについて見ていこう。120kgの内訳は以下の通りだ。

スズキでは以前から「1部品1グラム」の軽量化を図ってきた。すでに減量済みのボクサーのようなものだ。それをさらに120kgも軽減するには全方位作戦を採らねばならなかったことは想像に難くないが、上に掲げた内訳を見れば、ボディと足回りをトータルすると約50%、60kgにも達する。やはりこの部分が肝であるのは間違いない。

新シャシー「ハーテクト」

何をやったらこんなに軽くなるのかと言えば、それは構造の解析である。フレームの部材をできる限り折り曲げない。どうしても曲げる場合は一カ所で折り曲げず、できる限り穏やかに変化させる。これはシャシーに掛かる力が一カ所に集中することを防ぐ意味がある。こういう構造材に掛かるさまざまな力を応力と呼ぶが、応力が集中するとその部分に強度が必要になり、鋼板の板厚を上げなくてはならない。当然重くなる。逆に言えば、もし応力を分散できればその分軽くできることになる。

同時に強度の分担割り振りを見直した。例えばフレームとサブフレームだ。サブフレームとはサスペンションパーツを受け止める台座のようなもので、サスペンションはこのサブフレームを介してシャシーに取り付けられる。どうせサブフレームが必要ならば、本来シャシーが受け持つ強度の一部をサブフレームに割り振れば、それだけシャシーを構成する鋼板の板厚を下げることができる。

素材改革としては、薄くても(つまり軽い)強度の高い、高張力鋼板を積極的に採用している。これも形状を徹底的に解析し、より有利に応力を受け止められる形状に拘った。高張力鋼板はプレスが難しい。硬すぎて曲がらないのだ。最後の手段は加熱して成型するホットプレスという方法があるが、それをやればコストがかさむ。だから常温プレスで曲げられる限界に合わせ、あらゆる部品の形状と配置を見直した。こうして造り上げた新しいシャシーを、スズキは「ハーテクト」と名付けた(参考:http://www.suzuki.co.jp/car/technology/heartect/)。

ハーテクト
超高張力鋼板使用範囲

そして最も大きいのが全体最適化である。これまでも「1部品1グラム」の軽量化を目指し、部品それぞれの軽量を徹底してきたが、新型スイフトでは1台のクルマに仕上げた時の重量を考えて、部品の設計を基礎から見直した。ある部品が重くなったとしても、それによって他の部品がそれ以上に軽くできれば立派な成果である。あるいは部品形状をもっと直線的にできれば軽量化が可能だというなら、それと干渉する部品の形状を他部署に頼んで変えてもらう。

例えば従来のスタビライザーは、サスペンション部品を右へ左へと複雑にくねって避けながら左右のホイールをつないでいた。スタビライザーとは、要するに左右輪をつなぐねじりばねなので、複雑に曲げようと思えば無垢材のばね鋼を使うしかなかった。中空にしたくてもパイプは曲げるのが難しいからだ。そこで干渉する全ての部品形状を見直して、スタビライザーを直線的に通す設計にし、形状を単純にして中空化に成功した。足回りの18kgについて言えば、この中空スタビライザーの貢献は大きい。

冒頭から繰り返しているように、新型スイフトでは驚異的な軽量化がなされている。しかもそれは革命的なブレークスルー技術によって成されたのではなく、地道な縦割り設計の調整による、全体最適化の結果だったのである。