反応が一番いいのは「コスプレ」

【田原】海外の人はどういう情報に興味を持ちますか。

【亀井】反応が一番よかったのはコスプレでした。僕は高校生くらいまでアニメを観ていましたが、大学生になっていったん卒業しました。しばらく離れていたので、Tokyo Otaku Modeをやるにあたり、いま何が流行っているのかを知ろうと、秋葉原やイベントに行ってみました。そのとき撮った写真をリアルタイムで投稿したら、コスプレの写真が一番盛り上がった。

【田原】コスプレの情報を発信しても商売にならないですよね?

【亀井】はい。まずはマネタイズのことは考えず、見てくれる人たちに喜んでもらえたらいいかなと。規模が大きくなれば、そのうち収益化できるだろうと、のんびり考えていました。

田原総一朗●1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。本連載を収録した『起業家のように考える。』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。

アメリカで会社にするよう勧められた

【田原】サークルのノリから起業へと変わったきっかけは何ですか。

【亀井】サラリーマンのとき、個人的な趣味で海外企業の視察をしていました。サンフランシスコに行ったとき、知人から紹介してもらったのが元グーグルのリチャード・チェン。Tokyo Otaku Modeの話をすると、彼は「500 Startups」というアクセラレーターを紹介するから、そこに行けという。翌日、紹介されたとおりに500 Startupsのオフィスに行ってみると、会う人みんなから「会社にしたほうがいい」と言われて、そうなのかなと。

【田原】ちょっと待って。アクセラレーターって何ですか。

【亀井】塾みたいなものですね。起業家の背中を押して、会社をつくって、その会社が産んだ卵を孵化するところまで手伝ってくれます。アメリカだと、Yコンビネータやテックスターズ、そして500 Startupsといったところが有名です。

【田原】紹介してもらって、すぐ塾に入れてもらえるんですか。

【亀井】初めて行ったときは創業者のデーブ・マクルーアが不在でした。翌日、話を聞いたデーブが会いたいと言ってくれたようですが、僕らは帰国しなくてはならなかった。そのことを伝えたら、翌週に日本に行く予定があるから日本で会おうという話に。渋谷のバーで会って、立ち話でTokyo Otaku Modeのことを説明したら、「うちのプログラムに応募しなよ」と誘われました。

【田原】そのプログラムが塾なんですね。どんなことをするのですか。

【亀井】参加できるのは、選別された約30社。1社につき、だいたい3~4人で参加します。僕たちは、僕とエンジニア、デザイナー、プロダクトをやる人、通訳の5人でした。具体的には、メンターのアドバイスをもらいながらプロダクトを磨いていきます。最終目標は資金調達。3カ月後にデモデーがあって、投資家の前でプレゼンをします。僕たちは5万ドルを調達できました。

【田原】勉強になりましたか?

【亀井】メンターはグーグルやアップルに勤めている人たちなので、とても参考になりました。それと、すでに成功している起業家が来て話してくれるのもよかった。うまくいった話だけじゃなくて、創業メンバーとケンカした話とか、奥さんとどうやってうまくやるかといった突っ込んだ話もしてくれるんです。日本でいえばサイバーエージェントの藤田晋社長のようなポジションの方がぶっちゃけてくれるので、それだけでも価値があるなと。