インターン期間を経て家族の理解も育っていく

とはいえ、キャリアブレーク後にそれまでの暮らしのサイクルを変えて働き始めるのは、家庭を持つ女性にとって決して簡単なことではない。「女性の再就職者たちは、家族との関係に重点を置き、環境を整えました。例えば、再就職の就職活動の時点から、パートナーや子どもなどの家族や周りの協力者へ積極的に相談し、巻き込んでいくことで、理解を取りつけ、協力してもらえるようになります」

特に子どもに対しては「再就職によって家族と一緒に過ごす時間が短くなるのは家族を“拒否”しているからではない」と心を込めてメッセージを伝え、理解してもらうことが大切。子どもの視点に立ち、食事や通学などに関わる日常の小さなことから、子どもの自立を図りつつ、必要な手助けをする。

コーエンさんが再就職支援をしてきた米国の高度女性人材たちの多くの例でも、離れている間に自分がしていたことをお互い楽しく報告する方法や家族で食事をともにする時間を最大限に楽しむ方法を思案するなど、様々な努力をしてきた。

再就職者が自分自身や生活を大きく変えるとき、家族の環境もまた大きく変わる。自分が第二の収入源となることで、それまで一人で家計収入を担ってきたパートナーのプレッシャーを和らげる一方、それまでなかった家事分担・保育コストなども新たに生じる。

コーエンさん自身も、4人の子育てを経て職場に戻った変化期は苦労が多かったと振り返る。お互い新卒でもなくミドルキャリアでもなかった“ハイブリッド”のユニークな立場として「インターンの同期は“戦友”です」。

コーエンさんは現在、iRelaunchが支援した4500人の再就職をケースワークとして文書化する活動に注力している。彼女たちが描いた努力と葛藤の軌跡は、世界中の母親を勇気づけるだろう。

文=河崎 環 撮影=谷川真紀子