定員割れの私立中学が大学入試改革を集客目的に利用?

もちろん、変化したのは入試選抜にかかわる話だけではない。

多くの中高は授業改革にも着手した(あるいは、着手しようとしている)。先述した「学力の3要素」を鍛えるため、「アクティブ・ラーニング(AL)」「グローバル教育」「ICT教育」「キャリア教育」などに重きを置きはじめた。

中高、とりわけ私学が入試問題や入試制度を改革すること、そして、授業手法を大胆に変えていくことは自由である。加えて、学校サイドが子どもたちの教育によかれと思い、新たな手法を採択したのであれば、わたしはそれを指弾するつもりは毛頭ない。

しかし、「2020年大学入試改革」に不安を覚えた保護者に対し、「集客」のために教育改革を進めるようであれば、これは問題だ。

リーマンショック以降、中学受験市場は冷え込んでいる。10数年前までは活況を呈した中学受験ではあるが、その当時と比較すると受験者総数は激減しているし、実際に「定員割れ」が生じている私学がたくさんある(それでも、この1・2年はやや復調したとされているが、「活況」と呼ぶには程遠い)。

実際、「2020年度大学入試に対応して、わが校では○○を改革しました」などと学校案内やホームページで謳う学校のうち、近年生徒集めに四苦八苦している学校が多く含まれているように思えるのだ。

このような学校は経営上苦しんでいることが多く、その改善を図るための「ビッグチャンス」として、大学入試改革に乗じた自校の入試改革を打ち出すことがあるのではないか。そうだとすれば、それは子どもたちのための改革ではない。つまり、「集客目的の改革」である。それは結果として子どもの学力向上に寄与することは難しいだろう。親が子の志望校選びをするときには、その点に注意してほしいと思う。

基礎力がない生徒に新教育手法を導入しても「上滑り」

「集客」を第一に考えた私立各校の教育改革は、子どもたちの「学力の3要素」を涵養させるだろうか。

そうした教育改革を進める学校の教員と話をする機会がときたまあるのだが、新しい手法を導入した教育現場ではそれらの取り組みが「上滑り」して、子どもたちの基礎力定着を阻害しているという話をよく耳にする。

そもそも、生徒募集に苦しんでいる学校に通う子どもたちは学力的に高い状態にあるとは言い難い。すなわち、「学力の3要素」のうち最も土台となる「知識・技能」という側面でつまずいている子が多いのではないか。

「学力の3要素」は3層で成り立っていて、それぞれは並列関係にあるのではない。すなわち、下層部分が土台になってこそ中層部分があるのだし、その中層部分が確立されていないと上層部分に到達することはない。

よって、下層部分(知識・技能)のスキル獲得に悩み苦しんでいる子どもたちが、中層部分(思考力・判断力・表現力)や上層部分(主体性・多様性・協働性)のスキルを磨くのはなかなか難しい。