東京の都心3区(千代田区・港区・中央区)への人口回帰が止まらない。千代田区は36年ぶりに6万人を突破。地価高騰で郊外に流出した人口は、バブル崩壊後に底を打ち、右肩上がりが続く。駅に近く、通勤、買い物、飲食と便利。みずほ総合研究所の岡田豊主任研究員は、都心での暮らしを「職住遊近接」と表現する。

「都心では再開発が盛んな一方で、人口減少で賃料の頭打ちが続いています。かたやマンション価格の下落率は低く資産性がある。しかも、3区ともに財政力があり、千代田区のように高校卒業まで医療費実質無料という住民サービスもできるのです」

だが、都心への人口回帰は、郊外での人口減少と表と裏の関係だ。

「住みたい街ランキングで吉祥寺が昨年トップから外れましたが、JR中央線や私鉄各線の沿線ではかつての田園都市構想の名残で、駅近くは商業地、住宅地は駅から10分も歩くところばかり。かといって家賃が都心より格段に安いかといえば、そうではない。これでは都心にかなうわけがない。今後、郊外は深刻な人口流出が始まるでしょう」(岡田氏)

23区で唯一、消滅可能性都市となった豊島区の例もある。対抗策を打ち出さなければ、都内の自治体でも人口減少は避けられない。

(図版作成=大橋昭一)
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