エンジニアの熱意で生まれた「クイックアテンション」

もう1つ外音取り込みで面白い機能が「クイックアテンション」だ。ノイズキャンセリングをオンにして音楽を流しているときに、突然誰かに呼ばれたり、アナウンスが気になる瞬間があるだろう。そんなとき、右側のハウジングを手のひらで覆うと、一瞬にして音量が下がるとともにノーマルモードに切り替わり、外部音が聞こえるようになる。手のひらを外せば、またすぐにノイズキャンセリングが有効になり音楽も元通りになる。

人に話しかけられたときなどは、右側のハウジングを手で覆うと、音楽の音量が下がって外音が聞こえるようになる(クイックアテンションモード)。

「クイックアテンション」は、ノイズキャンセリング機能とともに真っ先にMDR-1000Xの性能を実感できる機能でもある。ハウジングを手で覆うだけというアクションも簡単で分かりやすい。実際に試してもらうと、誰もが聞こえ方の違いに目を丸くする。

この機能は、エンジニア側から「絶対に面白いからどうしても実現したい」と大庭さんに提案されて実現したのだそうだ。エンジニア自身がノイズキャンセリングヘッドフォンを使っているときにボタンを探すストレスを感じており、タッチパネルの進化が結びついて、「ハウジングを手で覆うと、ヘッドフォンを外さなくても外の音が聞こえるようになる」というアイデアに発展した。

実現に際しては、誤検出やマイクのハウリングといった問題も想定されたが、「問題はすべてエンジニア側で解決するから」と口説かれたそうだ。大庭氏も「この商品を担当して『ソニーらしいな』と思った瞬間でした」と振り返る。

「クイックアテンション」を使っている最中、それまで聴いていた音楽はかすかに聞こえるレベルまでボリュームが下がる。完全に停止しないところもポイントだ。

「一時停止すると、スマートフォンの機種によっては、手を離したとき再生されない可能性があり、それはストレスになります。かといって、音量をゼロにすると聞こえないまま勝手に音楽が進む。それもどうも気持ちが悪いですよね。そこで、わずかに聞こえるくらいまで音量を絞っています」(大庭氏)

移動の多いビジネスパーソンには欠かせないアイテムに

環境がめまぐるしく変わるビジネスパーソンにとって、行く先々で落ちついた環境を確保するのは課題だろう。そんなときMDR-1000Xが役に立つのではないだろうか。特に飛行機による移動が多い人なら、間違いなくその効果を実感できるはずだ。

「実はビジネスクラスでは、(ノイズキャンセリングヘッドフォンの)貸し出しが行われているところもあるくらいで、我々も飛行機でのユースはすごく大事に考えています。たとえば空港の待合エリアではボイスモードにしていただければ、いつでもアナウンスが聞ける状態を保てます。かつ雑踏は消して、音楽はボリュームを上げなくても楽しめます。

搭乗後はノイズキャンセリングを有効にすれば静寂を手に入れられるので、仕事をしやすくなると思います。付属のフライトアダプタで有線接続すれば、機内の映画も楽しめます。お食事の時間にはボイスモードにしていただければ、話しかけられた時に気づきやすくなります。キャビンアテンダントさんと会話するときは、もちろんクイックアテンションで。そんなユースストーリーを描いています」(大庭氏)

飛行機によく乗る人には何かと便利なMDR-1000X。女性にもよく似合うデザインだ。

飛行機に搭乗しないまでも、すでに電車の中での音楽試聴においてはMDR-1000Xが欠かせなくなってしまった筆者。久しぶりにノイズキャンセリング機能のないイヤホンを使ってみたところ、これはもう後に戻れなくなってしまった、と痛感したほどだ。

まずは1度、ノイズキャンセリングの有無で音楽の聞こえ方がどう違うのか試していただきたい。高音質で音楽が聴けて、周りの騒音をシャットアウトし、最高に“集中”できるヘッドフォン。もしかしたら、MDR-1000Xがストレスフルな日々の救世主になってくれる……かもしれない。

小さく折りたたむ、または平らに折りたたむことができるので持ち運びもしやすい。
次のページでは、ソニー「MDR-1000X」の企画書を掲載します。