宅配便は、すべてを合算した価格設定になっています。そのため、翌日配達など最速での配達が必要な人も不要な人も、同じ料金を払わされています。そこで、最速での配達を別料金(分離価格)にすれば、サービスの対価が明確になり、消費者はサービスの要不要を判断して利用できるようになり、世の中が本当に求めているサービスに近づくのではないでしょうか。

特に、配達全体の20%を占めるといわれる再配達が、社会的なコスト負担を強いる大きな要因になっています。不在の場合は、基本的に最寄りの営業所まで受け取りに来てもらうようにして、再配達は別料金にしてもよいのではないかと思います。

別料金にすると、サービスの改悪と感じるかもしれませんが、海外ではそれが当たり前の場合もあります。米国の物流企業のUPSでは、再配達のコストを消費者に負担してもらっています。また、中国では在宅率が低いためか、通販で購入した商品は職場に届けられます。日本の宅配業者も中国ではこの方法を採っています。

なぜ「サービスはタダ」という認識になるのか

日本のサービスが過剰になりやすい理由の1つは、「サービスはタダ」という認識が根強くあることです。欧米では、サービスは人によって異なるため、個別にチップを払う文化があります。それに対して日本では、ホテルやレストランが典型的ですが、常に高品質のサービスを提供する前提で成り立っているため、サービスは包括的で一律の価格設定になっています。そのため、サービスはタダで当たり前という認識になってしまうのです。サービスごとに値段をつけることは、そうした日本人の意識を変える意味でも有効でしょう。

話は少し逸れますが、欧米ではサービスがよい人にはチップがたくさん払われます。これは成果報酬型と言えます。日本の場合は一律ですから、いくらよいサービスをしても相応のリターンは得られません。これは、個々の成績に左右されない年功型賃金にも共通する考え方です。こうした日本的な考え方は、全体の和を保つうえでは有効ですが、人材獲得競争が激しくなる今後は、一人ひとりの仕事をきちんと評価することがより重要になるはずです。

人手不足の状況にどう対応していくかは、サービス業全体に共通する課題です。対応策の1つは自動化です。宅配便で言えば、自動運転のトラックがそう遠くない将来に実現されるでしょう。荷物の仕分けにおいても自動化が期待されます。そのためには、荷物の規格をある程度共通化することが必要になります。ちなみに、ヨーロッパでは花の流通には統一した規格のバケツ(フラワーバケット)が使用されており、荷物の仕分けが自動化しやすくなっています。