――「会社の決まり」に働く人があわせる、という働き方はもう古いのかもしれません。働く人にあわせて「会社の決まり」を変えていくというのが、ペンシルの特徴なのですね。

スタッフたちが、少しずつでも考え方が変わると、家に帰ったときの家族との接し方も変わります。それがどんどん広がっていけば世の中もよくなると思うのです。たとえば家で介護をしながら出勤して働いているスタッフもいますが、そういう問題って、すごく身近な誰にでも起こる話です。いろんな働き方をしている人たちがいれば、生きていくうえのヒントになったり、知らなかったことを知るきっかけにもなります。

タバコミュニケーションを職場に取り入れた

――喫煙者も排除しない方針のようですね。オフィスにうかがって、蒸気タバコ限定の喫煙可能エリアを設けていることに気づきました。どういう狙いがあるのですか。
「雨の日に屋外に行かなくてもよくなって、助かります。プルーム・テックはタバコのニオイがつかないと吸わない人からも好評です」と語るペンシルG&C事業部ユニットリーダー・アートディレクターの吉岡栄太郎さん。

これまでもオフィスにカフェエリアや、畳スペースを設けたりして、部署が違う人同士が交流できる環境は用意をしていたのですけれど、喫煙エリアはビルの外でした。で、「あの人たち全然連携ない部署なのに仲いいな」と思っていたら、実はタバコがきっかけだったと聞いて、それなら好きなタバコでリラックスできる場をオフィス内にも作れたらと思っていたのです。コミュニケーションが生まれやすい環境づくりって大事ですからね。

そんなとき「プルーム・テック」という蒸気タバコが登場し、これなら非喫煙者も煙やニオイが気にならないというので本当かどうかテスト導入をしてみました。すると、ニオイはしないし、喫煙者が外に行ってしまうコミュニケーションの分断で出てくるロスを考えると、非常にいいという肯定的な意見が多かったのです。喫煙者のお客様がいらしてもオフィス内で吸いながらの打ち合わせが可能です。

――実際に導入してみてどうでしたか。

導入してよかったですよ。「プルーム・テック」を吸っているときって話しかけやすい。気軽にちょっとした雑談をできる場が生まれたという実感はあります。アンケートの結果でも「ニオイが気にならない」「ニオイがつかない」という意見が多かったですし、他ではまだあまりやっていない新しい取り組みでもあるし、何より私たちは多様性を大事にしようと常に言っているので、その一環としていいも取り組みだったのかなと思っています。

――多様性にこだわるペンシルですが、もうひとつユニークな点があります。日本人従業員の9割が九州出身者で、"地元愛"が熱いとうかがいました。

福岡で生まれたペンシルですから。地元を大切にする意識は強いですね。今は東京のクライアントが多いのですが、1995年に創業者の覚田義明が福岡で起業したときには福岡の企業には本当にいろいろ助けてもらって会社を大きくすることができたのです。その恩返しというか、弊社では恩返しではなく「恩送り」と呼んでいますけれど、恩を受けた人に返すのではなく、次の世代に恩を送っていく。東京の仕事や海外の仕事を福岡に持ってくる。雇用を生み出す。それが福岡への貢献になると思うのです。福岡の活性化は頑張ってやりたいですね。で、いつかは日本中から福岡で働きたいという人が集まるような都市になったらいいですよね。実際、アジアにもすごく近いですし、食べ物もおいしいし、人もいいし。環境としてはバッチリなので(笑)。

(取材・構成=フリー編集者 遠藤成 撮影=松本浩和)
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