女にも離婚で負けない戦い方がある

もちろん、同じことは女性の立場からも言える。妻に財布を持たせて、あとはお任せという夫は、妻のへそくりに気づくことがほとんどない。一方で敏感な夫もいる。隠れてお金を貯めていることを見抜き、浪費しては妻を閉口させるような夫だ。「こんな夫とはもう一緒にいられない。だけど、自分は頑張って節約したのに、夫ばかりいい思いをしているのは悔しい」。妻は泣き寝入りするしかないのだろうか。

大丈夫、打つ手はある。夫と同じように浪費しているふりをするのだ。たとえば、友人が新しいバッグを買ったら、箱ごと1日だけ貸してもらい、「今まで我慢していたけれど、あなたがその気なら、私もがんがん使うから」と言って夫に見せびらかす。そんなことを何回か繰り返せば、離婚するときになって「へそくりなんかないわよ。全部使っちゃったもの」という嘘に真実味が増す。

共働きで、妻のほうが稼ぎが多い場合はどうか。働いている夫と専業主婦が資産を等分することは理解できるという人であっても、自分のほうが稼ぎが多く、しかも家事もこなしているとなれば、なぜ夫と等分にしなければいけないのかと思う人もいるだろう。しかし、現在のところ夫婦の家事分担については、裁判所は勘案してくれない。

「結婚するときに、家事も育児も分担するよう約束をするか、分担をしてくれる人を選ばない限り、どうしようもありません。夫を選んだ自分の責任と割り切るしかないんです」(岡野氏)

さらに悪いことに、専業主婦は財産分与で夫の厚生年金の半額を得られるが、働く女性には、適用されない。

「働いている女性は、離婚では不利なことが多い。女性にとっては理不尽ですが、共働きで、妻に不満がある男性は、離婚しても痛手を負いにくいというのが現状です」(岡野氏)

働いている女性は何としてもへそくりを貯めておきたいところだ。

正直者が損をするのは、財産についてだけではない。

たとえば、実は不倫をしているというとき。離婚を切り出した際に、隠しておくのはやましいからといってすべてを明らかにすれば、当然大問題になる。離婚成立までの時間は長くなり、多額の慰謝料を請求されるし、裁判においては、「ほかに好きな人ができた」というのは離婚を認める事由に該当しない。「相手に不倫されたから別れてほしい」という主張はできても、「私が不倫しているから別れてほしい」という主張は基本的に通らない。

そんなとき切り札になるのが別居だ。別居状態になれば、裁判所も夫婦関係が破綻しているとみなし、離婚が認められやすい。夫婦にまだ幼い子どもがいて、なおかつ相手が離婚したがっていない場合などは、それでも離婚成立まで時間がかかることがあるが、離婚協議がこじれてしまった場合は、早々に別居してしまおう。当然、そのあとは、どんな恋愛をしようが文句は言われない。ちなみに、別居してからの財産はそれぞれのものとなり、財産分与の対象外となる。

財産分与の対象になるのは、あくまでも婚姻関係が成立していた期間。それを考えると、より多く稼いでいるほうは、早く離婚したほうがトクに思える。専門家はどう見るか。

「どうやっても関係が修復できない状態ならそうでしょう。私のところに相談に来る人は相手が離婚に納得していない場合が多い。でも、客観的に話を聞いて、お金だけのために相手が離婚に応じないのだと判断したら情に惑わされずに離婚を薦めます」(岡野氏)