2017年5月19日(金)

朱鷺との共存を目指す「佐渡の稲作」

2008年、なぜ放鳥を始めたのか

dancyu 2015年11月号

文・江部拓弥 撮影・石渡朋

佐渡の田んぼで朱鷺を見た

佐渡は広いな。大きいな。

どれくらいの大きさかと言えば、東京ドーム1万8282個分らしい。

うん? わかりやすく言ったつもりが、ちっとも想像できないな。

では、これならどうだ。

「佐渡は日本一大きな離島である」

へぇって思い、ビッグな感じも伝わりますね。何せ、日本一だもん。

けどね、佐渡の広さを知るなら、佐渡の大地を踏むに限る。初めて佐渡に渡って、そう思ったわけです。まっすぐに続く道、その両側にどこまでも広がる田んぼ。遥か遠くには大佐渡山地が霞んで見える。佐渡、本当に広いなぁ。果たして、お目当てとは出逢えるだろうか?

「田んぼの中でついばんでいると稲穂に隠れがちです。注意して、よーく見てくださいね」

運転席の伊藤善行さんが教えてくれる。伊藤さん、佐渡の老舗旅館「伊藤屋」の5代目となる跡取り息子。この島をこよなく愛し、佐渡のことなら知らないことはないと言われるほどの佐渡通と聞き、今回の水先案内人をお願いしたのです。広大な佐渡を隅から隅までとはいかないまでも、ずずずいーっと、巡ってくれました。

さて、「伊藤屋」のワゴンで少し走ると、お目当てはすぐに見つかった。

「いました、伊藤さん」
「どこですか?」
「左の田んぼの畦道です」
「あれは鷺(さぎ)です」
「伊藤さん、いました」
「鷺ですね」
「あっちにいました」
「あれも鷺です」

うー。何度、このやり取りを繰り返しただろう。ちなみに、僕らが捜しているのは、鷺じゃない。特別天然記念物の朱鷺(とき)だ。新潟県の県の鳥であり、佐渡市の市の鳥でもある。

伊藤さん曰く「この時季、朱鷺は羽の裏がピンク色です」。そう教えてもらいながらも、目に入るのは鷺ばかり。なんだよ、佐渡は鷺だらけじゃないか~と諦めかけたとき、遠くで羽ばたく一羽の白い鳥。

あっ。ピンク色だ。朱鷺だ。見つけた。伊藤さん、伊藤さん、いました。朱鷺が田んぼに降り立ちました。

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江部 拓弥