預かった書類が1週間手つかずのまま

ある企業を週に1度訪問し、振込用紙や小切手、手形も含む大事な書類を預かる仕事を担当した。当時、支店に配属された行員なら2、3年目で経験する基本業務。

「でも私は初めてなので、お客さまのところにうかがうだけでもドキドキする感じ。大事な書類を預かって帰ってきたら、もう一仕事終えたという気持ちでした」

翌週、さあ、今週もお客さまのところに行かなければと思って机を開けたら、袋の中に先週預かった書類がそのまま残っていた。上司も飛び上がって驚いた。

慌ててお客さまのところに出向きおわびした。幸いにも大事には至らなかったが、本人も周りも肝を冷やす失敗だった。

「新人なら上司が『ちゃんと処理した?』とフォローするのでしょうが、当時の私は10年近いキャリアがあったので、できて当たり前と思われていたんです」

あらためて銀行員にとって基本的な仕事がいかに大事かが身に染みてわかった。

(左上から時計回りに)第一勧業銀行入行国際金融部配属/念願のMBA留学/厳しい環境で育児との両立にも苦労/初めての支店長。部下の成長も喜びのひとつ

その後、産休をはさんで、第一勧業証券へ。

「銀行の中で子育てをしながら働く総合職の女性の例がなかったので、新しくできた証券会社のほうが柔軟に対応できるのではと、配慮してくれたのかもしれません」

時短勤務や在宅勤務で、子育てとの両立をしながら、商品設計やM&Aアドバイザーの仕事で経験を積み、部長となって十数人の組織を引っ張ることに。

「証券会社の部長も大変でしたが、銀行に戻って法人企画部の次長になったときは苦労しました。何ごとも『次長はどう考えているのか』と判断を迫られました」