グローバルな今の時代にも通用する日本論

早稲田大学第一文学部哲学科卒
南海放送会長 河田正道


『武士道』新渡戸稲造(著) 岩波文庫

ローカル民放に就職し、警察担当の報道記者としてスタートをきった。その時代に出合ったのが、正木ひろし弁護士の個人雑誌「近きより」である。正木弁護士は終戦後、「八海事件」などを冤罪事件として無罪に導いたことで知られていた。この雑誌のタイトルは、イギリスの歴史学者トマス・カーライルの言葉からとっている。カーライルは、明治維新後の日本の知識人に大きな影響を与えた。新渡戸稲造もその一人である。『武士道』は、「武士道が日本人の精神的な土台となっている」と、世界にむけて発したメッセージである。グローバルな今の時代にも十分通用し、参考になる日本論である。
「日本的経営」のルーツに迫る

東京教育大学(現筑波大学)文学部哲学科卒
アイウィル主宰 染谷和巳


『勤勉の哲学』山本七平(著) 祥伝社

世界が羨む現在の繁栄は、ほかの国にはない「日本的経営」という特性のおかげである。この特性は江戸時代中期の一人の思想家が生み出しつくり上げた。呉服屋の番頭上がりの石田梅岩は自宅で私塾を開き、訪れる商人に教え『倹約斉家論』を著した。その教えは「石門心学」として弟子の手で全国に広がり、市民思想の本流になった。明治以降の経済界の指導者、渋沢栄一、松下幸之助、出光佐三などは皆、石門心学の徒であった。山本七平は梅岩の贅沢と浪費を戒め、勤勉と倹約をすすめる思想が日本人の労働観となり経済発展の礎になっていると指摘している。何度も読み直している。
非常識なまでの生き方への情熱と真剣さとは

法政大学文学部哲学科卒
猿田彦珈琲社長 大塚朝之


『ペップ・グアルディオラキミにすべてを語ろう』
マルティ・パラルナウ(著) 東邦出版


FCバルセロナというフットボールチームを最も成功させた監督がペップ・グアルディオラである。新人監督にして世界一のスーパースターだったロナウジーニョを放出し、当時の若きメッシを中心選手に抜擢した大胆不敵さ。攻撃して攻撃して攻撃するという理想論でしかない戦術を実践するための緻密すぎるまでの細かな準備。史上最高と呼ばれる戦術家の着眼点や自身の家族との付き合い方までが読みとれる著書になっている。非常識なまでの生き方への情熱と真剣さ。大学時代に学んだパスカルの繊細かつ大胆不敵な精神と、ベルクソンの情熱からはじまる熱運動の話を思い出さずにはいられない。