地元への出店で協調関係を築く

店舗が拡大しても茨城県中心が同社の流儀だ。本店には創業時から通うお客もおり、店内で鈴木氏を取材中に「あら、会長久しぶり」と常連客の女性から声がかかることもあった。そうした地元密着が評価されて県内各地から出店要請が増えているという。今回、筆者は茨城大学の図書館内にある「サザコーヒー茨城大学ライブラリーカフェ」を訪ねた。2014年4月に同店をオープンした理由は、「大学からの熱烈なラブコールがあったから」という。取材時に店内で資料を読んでいた同大人文学部の清山玲教授は、店の効果をこう話す。

「この店ができたので、他の大学から来られる方にも自慢できるようになりました(笑)。当大学でシンポジウムを開催しても、その後に行く場所に困ったのですが、そうした面も解消されました」

カフェの存在は図書館のイメージアップにもなっているようだ。2人連れだった人文学部2年生の女子学生は「今日はココア(480円)を頼みました。学食に比べると安くはないのであまり来ませんが、イスの間隔も広く、落ち着いた雰囲気がいいですね」と教えてくれた。茨城大とは商品開発でも連携しているという。

冒頭で紹介した「30年で店舗数が半減」は、実は数字の裏にもう1つ本質がある。昭和時代の「喫茶店のマスター」、平成時代の「カフェのバリスタ」に象徴されるように、昔も今も「カフェ・喫茶店を開業したい人」は多く、人気業態なのだ。だが3年続く店は少なく「多産多死の業態」とも言われる。繁盛する店に共通するのは、リピート客をがっちり押さえていること。商品・接客・価格・雰囲気など「何の」「どこに」こだわり、顧客を獲得するかだ。次回は“茨城愛”も生かした商品開発など、同社の仕掛けを紹介したい。

(左)茨城大学図書館1階にあるサザコーヒーライブラリーカフェ(正面左)(右)茨城大学ライブラリーカフェ店内の「且座喫茶」看板
高井 尚之 (たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(プレジデント社)がある。これ以外に『カフェと日本人』(講談社)、『「解」は己の中にあり』(同)、『セシルマクビー 感性の方程式』(日本実業出版社)、『なぜ「高くても売れる」のか』(文藝春秋)、『日本カフェ興亡記』(日本経済新聞出版社)、『花王「百年・愚直」のものづくり』(日経ビジネス人文庫)など著書多数。
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