誰しも少なからず老後への不安を抱えている中、いつでも柔和な笑顔を湛え、自由で楽しく生きている(ように見える)蛭子能収さん。漫画にテレビに、生き馬の目を抜く業界に身を置きながら、蛭子さんはなぜ、あれほど自由奔放に振る舞えるのだろうか?

蛭子能収氏●1947年生まれ。長崎商業高校卒業後、看板店、ちり紙交換、ダスキン配達などの職業を経て、33歳で漫画家に転身。現在は俳優やタレントとして活躍中。著書に『ひとりぼっちを笑うな』(KADOKAWA)ほか。

御年69歳になる蛭子さんを直撃すると、「僕だって不安でいっぱいなんですよ~!」と胸の内を明かしてくれたが、そこにはやっぱり悲壮感はない。果たしてこれはキャラづくりなのか、あるいは単なる天然なのか――。

いずれにしても、ニコニコと不安を語る蛭子さんを見ていると、真剣に老後を案じることが、何やらバカバカしくすら思えてくる。

ならば、そんな蛭子さんに老後の悩みをぶつけてみれば、我々には思いもよらない名回答、珍回答によって、楽しく生きるためのヒントが得られるのではないか、というのが本稿の主旨である。

本能の赴くままに行動し、ゆるゆると人生をサバイブしてきた蛭子さんの人生哲学に倣い、気ままに生きる術を身につけよう。老後資金の不足、健康面の不安、家族関係のいざこざなど、数え上げればキリがない不安要素に折り合いがつき、きっと自由で楽しい老後が送れるはずだ。

「老後資金が足りなくなりそうで、不安です」

【相談】
そんなに散財してきたわけではありませんが、貯金がほとんどありません。定年後も働くといっても今より稼ぎは減るわけですし、将来のことを考えると不安で仕方ありません。 (46歳男性・システムエンジニア)

これは、不安を感じて当たり前でしょうね。僕だって、長いことお金に関しては苦労してきましたから、よくわかります。今も不安でいっぱいです。最近でこそ、ちょこちょこテレビに呼んでもらえるようになったので、少しは稼げるようになりましたけど、漫画家だけで食べていた時代は本当に辛かったんです。そもそも数がそれほどこなせないし、原稿料も決して高くない。そのうちアイデアも浮かばなくなってきて、とにかく漫画を描くのが苦痛な時期がありました。それから比べると、テレビ出演の仕事は楽に稼げるのでいいですねえ。体力的にも今のほうがずっと楽。

実は、僕はこれまで、貯金というものをまったくしてこなかったんです。もらったらもらった分だけ、全部使ってしまっていました。老後に対する危機感も、全然なかった。それが間もなく70歳を迎えようかというこの年になって、ようやく不安を覚えるようになってきました。一生懸命働いて、少しでも老後の資金を蓄えないといけないなと、痛感しているんです。

だから本当は今、もっといっぱい仕事が欲しいんですよ。いや、仕事が欲しいんじゃなくて、お金が欲しいです(笑)。できるだけ仕事のオファーを断らないようにしているのも、そのためです。こういう雑誌の仕事だって、ギャラが高ければ高いほど嬉しいです。