日常生活で言葉は自然に慣れてくる

吉田研作・上智大学言語教育研究センター長

【三宅義和・イーオン社長】今回は上智大学言語教育研究センター長の吉田研作先生にお話をお伺いします。吉田先生は『起きてから寝るまで英語表現550』など「起きてから寝るまで英語表現」シリーズ がとても有名です。

この3月31日に、小学校・中学校の次期学習指導要領が公示されました。吉田先生は、文部科学省の「英語教育の在り方に関する有識者会議」や「英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会」の委員など、今回の英語教育改革に関わる、ほとんどの部会に名前を連ねておられます。まさに、現在の日本の英語教育改革の中心で活躍されているわけです。

【吉田研作・上智大学言語教育研究センター長】恐れ入ります。

【三宅】そこで日本の英語教育改革について、じっくりうかがいたいと思います。吉田先生は帰国子女だそうですね。何歳の時に、どちらで過ごされましたか。

【吉田】1955年、小学校1年生の時にアメリカのニューヨークに、父親の仕事の関係で行きました。当時は、日本人はほとんどいない時代です。振り返ってみると、小1というのがすごく良かったと思います。1学期が終わって、2学期の途中で渡米したのですが、向こうの同学年の勉強で難しいことは何もありませんでした。もちろん、英語はわかりません(笑)。しかし、算数や理科は大丈夫でした。3カ月ほど教室の後ろで、1人ポツンとクレヨンと画用紙を渡されて絵を描いていましたが。

【三宅】そうなのですか。

【吉田】すると、そのうちに、教師やクラスメートの言っていることが理解できるようになり、席も一番前に移りました。その後は問題なかったですね。

【三宅】大人だとなかなかそうはいかないでしょうが、子どもの柔軟な感性と言うか、受容力はすごいですね。

【吉田】言葉というのは言葉だけの問題ではなくて、その言葉によって伝わってくる情報量がすごく大きい。大人の場合はそれが複雑です。認知的にも相当込み入ったことが伝達されるわけですけれども、子どもの場合は単純だし、勉強や遊びの中で繰り返し使われる英語がほとんどです。そうした日常会話は生活をしていれば、そのうちに自然と慣れてしまう感じでしょうか。

【三宅】ニューヨークには何年いらしたのですか。

【吉田】1年半ぐらいでした。その後、小学校2年の終わりになって、父親の転勤でカナダのモントリオールに移りました。しかし、カナダの学校の方がアメリカよりレベルが高いと言われました。教師から「小学校2年生をもう1度やるように」と言われました。

ところが、途中で「もういいよ」と許可され、学年の途中で3年生に進級しました。そして、3、4学年が終了した段階で、今度は「6年に入りなさい」ということになり、5年生はスキップしました。