<解説>

戦後の成長を支えてきた日本型の会社社会が時代に合わせて変容するにつれ、組織に求められる上司像にも変化が生まれています。

「堤真一さんタイプは、まさに昔かたぎの、デンと構えた昭和の部長といった印象ですね」(人材育成企業FeelWorks創業者 前川孝雄さん)。「将来を見越して意思決定する力が上司には求められる。その決定を部下に納得させられる論理力や、組織を動かす政治力も。時代にかかわらず普遍的な組織の要となる存在でしょう」

▼チャレンジ精神とイノベーターマインド

次の松岡修造さんタイプに関しては「彼の熱さは今の日本の会社にこそ求められている」と前川さん。「終身雇用、年功序列が崩壊して、会社組織への冷めた意識を持つ賢い若者が増えていますが、働く人のほとんどがそうなると、組織が成立しなくなってしまいます。松岡さんのような上司から情熱が伝染して、チームが本気になったとき、組織にチャレンジする姿勢が生まれるのです」

チャレンジ精神という点では、阿部寛さんタイプも同じ。「オーナー経営者に多いのですが、経営効率や合理性にがんじがらめになるのではなく、ビジョンや夢を胸にイノベーションを仕掛ける上司です」。合理性の世界ではなく、感情の世界で物事を捉えられる女性は、その意味で会社の仕組みを変える可能性を大いに持っている、と前川さんは語気を強めます。

▼これから求められる、胆力と当事者感覚

マツコさんタイプは、「愛他精神を持った、いわばアンチエリートのヒーローです」と前川さん。

「性別や年代、価値観の違いを超えて、どのような部下とも対峙(たいじ)できる胆力がないと、これからの時代の上司は務まりません。踏み込んだ助言であっても部下を納得させられるか。これは愛情を注ぐことはもちろん、自身に人間力があって初めてできることです」

最後に、つるの剛士さんタイプは「ワーク・ライフ・バランスを当事者として体験し、理解しているこれからの時代の上司像です。ただし、共感力や理解力だけでは部下はついてきません。当然、仕事上のパフォーマンスを出していることが必須です」。

そう、部下は強くて優しい上司を求めているのですね。

前川孝雄
人材育成企業FeelWorks創業者。「上司力研修」、社内報編集などで250社以上の「人が育つ現場づくり」を支援。『上司の9割は部下の成長に無関心』『ダイバーシティの教科書』など著書多数。青山学院大学兼任講師。
 

中村純司=イラスト