数世代の成長と老いを見つめる次回作

前作から2年ぶりのシリーズ完結となる第7巻では、イギリスの劇作家・シェイクスピアの希少本をめぐってストーリーが展開していく。驚くのは、そのために三上氏が読み込んだ資料の多さだ。巻末には松岡和子訳『シェイクスピア全集』(ちくま文庫)から専門書、解説書、洋書など43件にものぼる多彩な参考文献が列記されている。

いま次作の準備に取りかかっている。舞台は、昭和初期から平成まで数世代の人たちが住んだ東京・渋谷の「代官山同潤会アパート」。いま多くの人が住むマンションの原型となった建物で、日本で最初期の集合住宅だ。住宅史、文化史だけでなく、日本の近代史にも深くかかわる。どんな資料を読み込んで、その舞台を効果的に描くのか。物語だけでなく、次作の「参考文献」を読むのも、いまから楽しみである。

三上延(みかみ・えん)
1971年、神奈川県生まれ。10歳で藤沢市に転居。大学卒業後、藤沢市の中古レコード店で2年、古書店で3年アルバイト勤務。古書店での担当は絶版ビデオ、映画パンフレット、絶版文庫、古書マンガなど。2002年に電撃文庫『ダーク・バイオレッツ』でデビュー。
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