2017年4月28日(金)

なぜ台湾の精進料理「素食」は旨くて美しいのか?

dancyu 2015年9月号

文・飯塚天心 撮影・蔡 宗昇

台南で気楽に一日ベジタリアン

台北から台湾新幹線で南へ1時間。“台湾の古都”といわれる台南の通りにはこぢんまりとした個人経営の飲食店が軒を連ねる。牛肉湯(ニウロンタン)と呼ばれる牛肉のスープ、虱目魚(サバヒー)と呼ばれる白身の魚の粥、人気のデザート、マンゴーかき氷。そんな安旨グルメにハマり、ひたすら街中の旨いものを食べ尽くさんばかりだった筆者は街中の看板に“素食”の文字が多いことに気がついた。どんな食べ物かと聞いてみると「素食と書いて、スーシーと読むの。日本で言うと肉や魚を使わない精進料理の店ってところかな?」。そんな馬鹿な。素食の看板を掲げる店はどう見ても定食屋然とした店ばかりだったのだ。

▼素食って?
素食=質素な、はたまた粗い食事、ではない。素食とは中国語で菜食の意味。日本でいうと精進料理といったところ。殺生を嫌い、菜食を好む敬虔な仏教徒が人口の約10%を占める台湾ではベジタリアンが多く、街中でも「素食」の看板を多く目にする。また素食店でなくても、素食メニューを選択することができる店も多い。卵に関しては使う店と使わない店が存在する。卵は生まれてないので殺生ではない、いや殺生だと意見が分かれるが、その辺のこだわりは薄い気がする。

昨日の夕食の肉料理とアルコールでもたれまくった胃袋。「今日はなんちゃって素食者、ベジタリアンになる!」と決心し、朝からホテルで自転車を拝借して、街中の素食店を巡ることにした。

まず、朝食は点心を食べたいと思い訪れたのは、台南駅近くの青年路(チンネンルー)にある「清祺(チンチー)素食」。店先には蒸したて、揚げたての点心がずらりと並ぶ。朝から次々にバイクが乗りつけ、左手にトレイ、右手にトングでパン屋のように点心を取って、会計に進んでいく。イートインもあり、ファストフード店といった様相だ。

常連たちに素食の意識は薄い。安くて、美味しいから通っている人が多い。全然ストイックじゃないベジライフだ。亜熱帯らしいお気楽感もこの店の魅力の一つ。点心3つと豆乳で350円くらい。
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飯塚 天心