魅力的なタイトルがつけられるかは、企画書でも提案書でも最初の勝負どころ。トヨタやキリンなどの数々のコピーを手がけ、第一線で活躍するコピーライター・渡邉洋介氏が指南する。

<文章編>

資料に有効な文章と聞くと、言葉のテクニックを想像するかもしれない。

「でも、テクニックよりも大切なことがあります」と電通のコピーライター、渡邉洋介さんは言う。

「大事なのは、企画書であるなら読んだ人に行動を起こしてもらう、という目的を強く意識することです。企画書のゴールは『読ませる』ことではなく『動かす』ことでしょう。言い回しや上手な表現ばかり凝っても人は動きません。不特定多数に向けて書く広告コピーと違って、企画書は届ける人の顔がより見えやすいという利点があります。上司なのか、クライアントなのか。読む相手を想定しながら書くといいと思います」

そして、読み手がこの資料でわかるだろうか? という視点を持つのも大事だという。プレジデント編集部員Tは、よく雑誌の見出しや企画書を書くとき「意味が伝わらない」とやり直しになる。皆が使わないようなカッコいい言葉を意識して使っているのだが……。

「以前、社内のさまざまな企画書を読んでみたところ、アイデアがすごいなと思った企画書は、どれもわかりやすく書かれていました。ビジネス文書というと、自分を賢く見せようとしたり、知識をたくさん書きたくなりますが、相手はそれを求めていません。こちらの思いを押しつけることなく、専門用語を含まない平易な言葉の使用を心がけるべきです」(渡邉さん)

それでは、わかりやすく、相手に響くような言葉はどうすれば生まれるのか。渡邉さん自身、コピーライターという職業上の経験から、言葉は「ひらめく」ものではないと感じたそうだ。

「『見つける』という感覚に近いです。僕自身も、何個も考え、何回もダメ出しされて書き直して、たくさんの中から一つ探し出した言葉がコピーとして、ようやく世の中に出ていきます」

いい言葉を見つける一つの方法が、コピーなり見出しなり、課題に対して「100個書く」ことだという。100個書いたら、書いた時間と同じぐらいの時間をかけて、その中から一つ選ぶ。時間がなければ5個でも10個でも、とにかく複数書いてみる。もしたくさん書けたらそれ自体が自信になるし、「さすがに1個はいいのがあるだろう」という気持ちにさせてくれる。質を上げるには、量も必要なのだ。

また「手書き」も有効な手段だという。ノートを広げて手書きしていると腕の動きが脳に影響を与えるのか、アイデアが出てくることがあるそう。パソコンの文書ソフトのように左上から書く決まりがないので、ノートの一番下から書いてもいいし、裏でもいいし、絵を描いてもいい。その自由な感じが、頭を柔らかくしてくれる。これも、ぜひ試してみてほしい。