ゾゾタウンの新サービス「ツケ払い」。消費者問題に詳しい弁護士は「法の抜け穴をうまく利用したシステム」という。その理由とは――。

なぜ「2カ月以内の後払い」なのか

美女が雨に濡れながら、こちらをまっすぐに見つめて「好きだもん、好きなんだもん。2カ月待つなんてできないよ」と訴えてくる。まるで映画のワンシーンのようにインパクトのある映像の次にうつるのは、画面いっぱいの「ツケ払い お支払いは2カ月後」の文字。スタートトゥデイが運営する「ZOZOTOWN」(ゾゾタウン)が昨年11月から始めた「ツケ払い」システムのCMである。

ゾゾタウンのウェブサイトより引用。

ゾゾタウンは、5000社以上のファッションブランドを扱うショッピングサイトだ。豊富な品揃えと、サイトの使いやすさで、若者の間で人気がある。支払い方法も多様で、現金、コンビニ払い、クレジットカード払いから選ぶことができ、様々な事情でカードをもたないような人でも使いやすい仕組みになっている。そこへさらに、昨年11月から加わった「ツケ払い」が、いま波紋を広げている。

ゾゾタウンの「ツケ払い」とは、税込5万4000円を限度額として、商品注文日から最大2カ月間支払いを先送りにできる制度だ。商品到着後、請求書(振込用紙付きハガキ)が郵送で届けられ、購入者はコンビニエンスストアまたは銀行で支払う仕組みになっている。手数料は324円。例えば2017年4月15日に注文した場合は2017年6月15日まで支払いの“猶予期間”ができるのだ。

サービス開始直後、ゾゾタウンは冒頭のCMをはじめ、大々的に広告を売ってこれを宣伝した。その前のめりの姿勢は、システム開始当日である2016年11月1日付のリリースをみるとよくわかる。

「お財布事情を気にすることなく、お客様のご都合のよいタイミングでZOZOTOWNでのお買い物をお楽しみいただくことができます」
「商品到着後に中身を確認してから代金のお支払いができるので、ZOZOTOWNを初めてご利用いただくお客様にも安心してご注文いただけます」
「クレジットカードの利用に抵抗があるお客様やクレジットカードを保有していない若年層のお客様もZOZOTOWNをご利用いただきやすくなります」

リリースをみる限り、「ツケ払い」は良心的、かつ便利なサービスという印象を受ける。「試してみよう」という気にさせられた利用者も多いはずだ。

また、盛んなPRの結果、ゾゾタウンの利用者も、「ツケ払い」の存在にはすぐ気付いたようだ。「昨年12月頃に買い物をした時、ホームページの右上に動くアイコンで『ツケ払い』という文字が踊っていたのが印象的でした。どのページを開いても、ずっと画面の右上で『ツケ払い』の文字が踊っているんです。いやでも目に入りました。商品を購入する際にもしきりに『ツケ払い』をすすめる表示が出てきて、なんだろう、と思った」(30歳女性)。ただし、4月13日現在、このアイコンは消えている。

なぜこのようなサービスを開始したのか。その背景について、スタートトゥデイ広報部に問い合わせたところ、「現金での決済のニーズや商品到着後の後払いのニーズにお応えするため」との回答を得た。

だが、「後払い」を選ぶ理由とは、「いま払えないから」ではないのか。サービス開始から約半年が経ち、延滞のリスクが指摘されている。