PANA=写真
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経済財政政策担当大臣 与謝野 馨(よさの・かおる)
1938年、東京都生まれ。63年東大法学部卒業。衆議院議員。自民党時代に官房長官、財務大臣などを歴任。2010年に自民党を離党、「たちあがれ日本」を結党。11年1月、離党。同月発足の第2次菅内閣で現職。


 

迷走する民主党政権に起死回生のチャンスがあるとすれば、6月に発表予定の「社会保障と税の一体改革」だろう。消費税増税の代わりに、民主党が公約した公務員の賃金削減や公的年金制度の改革など社会保障の抜本的な改革案が盛り込まれる予定だ。

その消費税増税の推進役として登場したのが、与謝野馨経済財政担当大臣だ。たちあがれ日本を離党しての入閣に、古巣の自民党からは議員辞職を強く求められたが、もとより批判は覚悟のうえだった。持論である「消費税増税による早期の財政再建」を実現するためには、菅政権で閣僚として参画するしか方法はなかった。

ただ、与謝野氏のイメージする改革と民主党のそれには大きな隔たりもある。例えば、民主党は財源を消費税で賄う「税方式」の導入で、すべての国民が最低月額7万円を受け取れる最低保障年金制度への転換を目指している。他方、与謝野氏は基礎年金部分を社会保険料で賄う、従来通りの現実路線を主張している。

与謝野氏を目玉にした第2次菅政権誕生を待つかのように、米格付け会社のS&Pが、日本国債を「AAマイナス」に1段階引き下げた。財政再建の時間はあまり残されていない、という警告ともいえる。そんななか、元自民党大物OBなどがメンバーになった超党派色の強い有識者会議が開催され、改革案作りの議論がスタートした。

与謝野氏のバックには中曽根康弘元首相の影もちらつく。だが、少なくとも国民にとっては、あまりに頼りない菅政権の中で“重し”の一つになった。一部には、特例法による国家公務員給与一律2割下げとセットでの消費税増税という案も飛び交う。国民の将来への不安を和らげることができるか。与謝野氏の本気度が試される。

(PANA=写真)