2017年4月21日(金)

ウマい焼鳥の証明書「紀州備長炭使用店」

dancyu 2015年7月号

撮影・岡山寛司

3種の炭を比べると紀州備長炭の「高温を長時間維持」する力はダントツ。なお安価な黒炭は1.5kgで500円程度、外国産の備長炭は5000円前後。紀州備長炭はなんと1万2000円前後。この価格差でも火持ちのいい紀州備長炭は大人気だという。

詳しくは写真をご覧いただきたいが、要約すると「黒炭ではまともに焼くことすらできず、外国産の備長炭は少し焼きムラができるが及第点、紀州備長炭は完璧な仕上がり」といったところか。

なかでも特筆すべきは、紀州備長炭による「串を抜いた穴をふさぐほどのふっくら感」である。なぜこんな見事な焼き上がりになるのか。先の佐藤さんは「要素はいろいろありますが、一番は紀州備長炭の遠赤外線効果でしょう」と語る。

備長炭を割ると「美しい光沢の断面」が現れるが、この輝きこそ燃料(炭素)が詰まっている証。遠赤外線は物質が燃えることで発生するが、備長炭はその物質(炭素)が超高密度であるため放出量もケタ違い。それが肉の内部をふっくらと焼き上げるのだ。

現在、日本で備長炭がつくられるのは元祖・和歌山のほか、技術が伝わった高知、大分などの一部のみ。なぜ他の地域で発達しなかったかといえば材料となる堅い木材(ウバメガシなど)がないからだ。だが堅い木材が育つ山とは、ようするに岩山である。他の産業が育ちにくい厳しい土地なのだ。

備長炭など白炭の製法を伝えたのは和歌山県・高野山を開いた空海とされている。唐から持ち帰った白炭の製造技術が、たまたま厳しい岩山に育つ堅い木に出合い、良質な炭を生み、それが江戸時代に商魂たくましい備中屋長左衛門によってブランド化された。そうして生き残った紀州備長炭は、世界中のどの炭よりも焼鳥を旨く焼き上げる――。

つまり備長炭を使った「皮はパリッと、肉はジューシー」な日本の焼鳥の味は、さまざまな奇跡の上に成り立っているということだ。こんなにおいしい奇跡、そうあるものではない。

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