2017年4月21日(金)

ウマい焼鳥の証明書「紀州備長炭使用店」

dancyu 2015年7月号

撮影・岡山寛司

「紀州備長炭使用店」の看板はさながらウマい焼鳥の証明書。一体なぜ、備長炭を使うのか? そもそも備長炭とは何なのか? 焼鳥における名脇役の正体を探る!

紀州備長炭使用店――。

店先でこの札を見れば焼鳥通は「ほう」と微笑み、そうでない人も「たぶん高級な炭を使って、肉を焼いてるんだろーな?」くらいは思うに違いない。

ウチは備長炭を使ってるよ(だから旨いよ!)などと言外に匂わせるなど、並大抵のブランド力ではない。一体どんな炭なのだろう? 多くの焼鳥の名店が「備長炭の話といえば……」と名前を挙げる「佐藤燃料」の門を叩いた。

「備長」は人の名前でした

「そもそも備長というのは、江戸時代の炭問屋・備中屋長左衛門に由来している、というのが通説です」

そう話すのは都内の備長炭の扱いを一手に引き受け、焼鳥界の陰のフィクサー的存在(と、噂の)佐藤仁志さんだ。

時は元禄年間(1700年頃)、紀伊田辺藩城下で商いをしていた長左衛門が、江戸へ紀州の良質な炭を出荷したところ、鰻屋などで大評判に。勢いづいた長左衛門が、自分の名前から「備長炭」と名付けて定着させた……てな具合。

「ようするに炭問屋のブランド名だったわけです」

長左衛門が取り扱っていた炭は、堅いウバメガシを使った白炭で「紀州備長炭」の原型だ。近年では中国やラオスでも“備長炭”がつくられているが、ここで一度、炭の分類について軽く整理を。

木炭は黒炭と白炭の2種に大別される。黒炭はいわゆる“普通の炭”で、ホームセンターなどでキャンプ用に売られている真っ黒いやつ。対して白炭は、備長炭に代表される、表面がやや白いものだ。

2種の炭の最大の違いは、製造時の消火方法。黒炭は炭焼きのあと密閉し、時間をかけて鎮火するが、白炭は超高温のまま外にかき出し、白い灰をドサッとかぶせて“急冷”する。結果、不純物が少なく密度の濃い(堅い)炭が出来上がる。

では、紀州備長炭は何がすごいのか?

「炭の香りなどもありますが、最終的には“火力が強くて長時間もつ”これに尽きます」(「実験その一」参照)

実は炭というのは、火力が強ければ短時間で灰になってしまい、火力が弱ければ長くもつ。火力と持続時間は反比例するものなのだ。だから「高温を長時間維持」という矛盾する性質を兼ね備えているのはスゴいことなのである。

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