「巧言令色」なのは、籠池氏か、安倍首相側か?

▼「巧言令色鮮(すくな)し仁、剛毅木訥仁に近し」

「巧言令色鮮(すくな)し仁、剛毅木訥仁に近し」という言葉が論語にはあります。巧言令色(言葉巧みで如才ない)な人は「仁」が少ない。「仁」とは「人への思いやり」や「誠実さ」のことです。仁が少ないということは、自己中心的だということ。誰かに取り入りたい人というのも、その範疇に含まれるでしょう。一方、剛毅木訥(言葉・表現は下手だが、飾らない)な人には思いやりや誠実さがあります。こういう人はそもそも人に取り入ろうという発想がありません。

はたして、渦中の籠池氏、安倍首相、安倍昭恵夫人、財務官僚たちは、巧言令色と剛毅木訥のどちらなのか。今後も彼らの言動を注視したいと思います。

『論語 増補版』加地 伸行(著)講談社刊

▼「郷原は徳の賊なり」

また、「郷原は徳の賊なり」という言葉も論語には出てきます。「郷原」とは「田舎の好人物」といったニュアンスの言葉で、広い世間を知らない人という揶揄が含まれています。田舎の小さな世界で、周りの人と仲良くしていくために、八方美人的に皆に良い顔をして本心を隠します。“被害”を受けるのは、この日和見主義者と付き合っている側のほうです。付き合っている側が「人徳」をなくしてしまい、正しい判断力さえもなくしかねません。こびへつらうようにニコニコして近づいてくる人物には警戒しないといけません。

籠池氏は、首相を大好きだったに違いありません(編注:外国特派員協会で、「本来、私は安倍首相のこと、好きなんです」と発言)。同学園が運営する塚本幼稚園の運動会で園児たちに「安倍首相頑張れ」と言わせ、小学校に首相の名前を付けようとしたほどですからね。

これまでの報道を総合的に判断すると、首相夫人を含めた近しい人々にうまく取り入り距離を縮めていったのではないかと想像できます。

安倍首相やその周辺はそんな籠池氏に対して次第に危機感を覚え、距離を置こうとしたのでしょう。結果的に安倍首相に“ふられ”た形となった籠池氏は、逆上し、ひょっとしたら「死なばもろとも」と考えているのかもしれません。だからこそ、証人喚問の場で、あれだけ堂々としていたのかもしれませんね。

と、考えると、籠池氏が前出の「郷原」なのでしょうか。それとも首相側に人徳がなく、正しい判断力や警戒心が足りなかったのでしょうか。