とりわけマネージャーに求められるのは、シフトの作成能力だと私は思っている。シフトを組み立てるのはパズルを解く作業に似ていて、ある程度の学力が必要だ。これが得意であることと、現場で活躍できることは必ずしもイコールではなく、親切で重宝される介護福祉士やホームヘルパーが管理者となった場合、苦手とすることも少なくないのである。

もちろんマネージャーの仕事は時間配分だけではない。スタッフへの業務割り当てが適切でない場合には、業務フローに無駄が生じ、事業所の生産性が下がる。書類整備や請求関連業務のために残業をしなければならなくなる。

宮本剛宏(みやもと・たけひろ)
1979年、東京生まれ。訪問介護事業を営む。

さらに悪いことに、マネジメント能力の欠如は、介護職の離職にも直結するのだ。スタッフに対する教育や業務フォローができず、相互に信頼関係を築けない場合、その事業所は離職率が高い傾向がある。これらの問題は、管理者が交代することで解決することが多く、こうした現実からも、管理者の能力不足が業界全体の人材不足を引き起こしていると言っていいだろう。

どうすれば介護業界に優秀な管理職が増えるのだろうか。もちろん、中途採用で管理職候補を採用できればそれにこしたことはない。しかし、中途採用で介護経験のある転職者は、管理職志望者が非常に少ない。また、すでに介護業界で管理職として活躍している人材が、転職しようとするケースは稀であるし、メーカーや金融など、他業界で活躍している管理職を介護業界へ転職させることは、条件面で難しいだろう。

管理職の獲得という点から言えば、新卒採用への投資が有効であるはずだ。介護事業者が積極的に管理職候補を採用し、戦略的な教育を行っていく。

「訪問介護業界の人手が、将来何十万人足りなくなる」と騒いで、税金や補助金を投入して未経験者を勧誘したところで、離職者も多く、人手不足は解決しない。結局は対症療法だ。それよりもマネジメントできる人を育成したほうが話は早い。売り上げが増え、コストが下がれば、スタッフの待遇もよくなり、業界も改善されていくだろう。

介護職員が約38万人不足するという25年は、遠い未来の話ではない。一刻も早い着手が望まれる。

(西村次雄=撮影)
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