豊洲新市場には、土地取得費(約1860億円)、施設建設費(約2747億円)など、計6000億円近くを投じてきた。東京都は築地市場跡地を約4300億円で売却できると見込み、その売却収入で補填する計画だ。しかし、今年1月に東京都が発表した試算では、豊洲市場が開場した場合には年間98億円の赤字になる。築地市場の経費の4倍になる計算である。

移転推進派は2つの市場の安全性に着目した主張を繰り広げるが、慎重派からは「豊洲移転後の20年後、30年後にどれだけの赤字が出るか。収支の健全性も考慮しなければ、都民は納得しない」と批判する。築地女将の会から批判される自民党の「築地バッシング」も築地市場跡地の資産価値を損ねる可能性が指摘されており、小池氏周辺から「批判のための批判をする自民党に成り下がった」との声も漏れる。

昨年11月に小池氏が発表した豊洲市場問題に関するロードマップは、移転判断を今年夏ごろにするとしている。都議選の公約に豊洲移転を盛り込む自民党は、環境基準で確保するとした「安心」と、将来にわたる市場の持続可能性をいかに都民に説明するのか。都庁幹部が語る東京都の市場移転可否の判断ポイントは次のとおりだ。

「石原氏と自民党が吊り上げた過去の『厳しすぎる基準』をさらなる改修で満たせるのか。建築工事入札の落札率99.7%以上という、到底都民の理解を得られないであろう放漫な豊洲運営を、大胆にコストカットできるのか」

この2つを満たすことが小池氏の政治手腕として求められている。

(時事通信フォト=写真)
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