肉の焼け具合まで気を配れますか

おそらく熊谷亮丸氏は、エコノミストのなかでも、とりわけ多忙な日々を過ごす一人だろう。ホームグラウンドである大和総研ではチーフエコノミストとして40人のスタッフを統括し、経済分析レポートをまとめる。そのかたわら「ワールドビジネスサテライト(WBS)」など複数のテレビ番組のコメンテーターもこなす。加えて、全国各地での講演活動、単行本執筆と八面六臂の活躍だ。

大和総研チーフエコノミスト・執行役員 熊谷亮丸氏

「デール・カーネギーが『道は開ける』で<今日、1日の区切りで生きよ>といいました。私も、人間は一瞬一瞬だと思う。だから、1回のレポート執筆、テレビ出演、講演に全力を集中します。そのためには準備も万全でなければいけない。例えばWBSでは、1回の出演で3回話しますが、1回1分のコメントでも20~30分話せるだけの材料を用意しています」

こう語る熊谷氏の1週間スケジュール表は、文字どおり分刻み。日曜日には、NHKの「日曜討論」があり、ウイークデーの欄になると、大和証券グループでのレクチャー、マスコミの取材対応、対談、講演と目白押し。18時以降ともなれば、政治家や経済界の首脳、大手メディアの記者との情報交換を兼ねた食事会で埋まる。

そんな熊谷氏も年の初めには、1年の計を立てる。その前提として10年、20年後の自分のなりたい姿を思い描いてプライオリティを決める。そして、定期的に棚卸しをして、未達成の計画は見直す。そのバランスが大事だという。基本的には、仕事は細かいことの積み重ね、つまり“凡事徹底”にほかならない。

プロ野球解説者の野村克也氏は、監督時代に若手選手を育てるとき、技術やセンスもさることながら、日々の振る舞いで、それができるかを判断した。例えば、グラウンドの転がっているボールに気づいて、さっと拾えるかどうか。食事の場面で、肉の焼け具合に気を配れるかだ。