脳の特性を利用すればあがり症は克服できる

「人は危険な場所に立たされると、自律神経の交感神経が優位になり、心臓が高鳴り、顔面は紅潮し、汗をかきます。この反応は、危険に立ち向かう、または回避するために、体がエネルギーを出している状態です。体は臨戦状態なのに、それを本能に逆らって抑え込み、リラックスしようとするのは非常に難しいことなのです」

多くの人を救ってきた金光さんのあがり症克服メソッド。その手法は、脳の特性を活かしたものだ。

「脳の自然な働きを抑えようとするのには無理があります。むしろ、それを利用する。その方法がこれから紹介する〈5つの魔法〉です」

金光さんがクライアントに〈5つの魔法〉を伝える前に、必ずお願いしている大事な約束事がある。

「日頃から『でも』『だって』『どうせ』のようなマイナスの言葉を使っていたら、言うのをやめてください。そして、反省する癖もあるようなら、それもやめましょう」

マイナスの言葉を日常的に使っていると、せっかくいい情報に触れても、「でも自分には無理だ」と情報をシャットアウトしてしまい、それを活かすことができない。また、過度に反省することは苦手意識の強化につながるので注意が必要なのだ。

聞き方を変えると話すのがラクになる

「あがり症の人は他人の話を聞くとき、〈今、詰まった。硬くなっているな〉と緊張しているかどうかを気にしたり、〈あの人よりこの人のほうが上手いな〉などと評価しがちです。すると自分が人前で話すとき、みんなもきっとそうやって自分が緊張しているかどうかを見ている、上手いか下手かを評価していると錯覚してしまい、それが過度のプレッシャーとなってあがりをより誘引します。

それらを全部やめて、聴衆のなかで一番いい、肯定的な聞き役を演じてみましょう。笑顔で〈なるほど〉とうなずきながら聞く。これを繰り返すことで、人は肯定的に話を聞いてくれるものだと思えるようになり、今までよりも、ずっとラクに話せるようになります」