日本で「プロ経営者」が成功しない理由

日本もバブル崩壊後に、多くの大手企業がこぞって成果主義を導入し、給与に格差をつけることで競争力を出し、生産性を上げようとしました。ところが、それは惨憺たる結果に終わりました。経営の現場は荒れ、社員のモチベーションが低下したことはご存知のとおりです。

最近、その是非が問われている「プロ経営者」にしてもそうだと思います。これまでの日本企業にあっては、同族経営にしろ、内部からの昇格にしろ、自社の企業文化を理解したが人物がトップの地位に就いてきました。ところが、近年になって、日本の大手企業のなかで外部からスカウトした人材を社長に就任させるケースが見られるようになりました。

日本の大手企業が外部から社長を登用する率は3%程度といわれています。これに対して、アメリカは約20%、世界平均では22~23%。こうしたところにも、父性文化と母性文化の違いが出ているといっていいでしょう。

また、日本には父性文化的な手法に対するアレルギーがあるといっていいかもしれません。住宅設備大手のLIXILや通信教育と出版で知られるベネッセホールディングスでは「プロ経営者」が改革の最中で退任に追い込まれました。残念ながら日本ではうまくいかなかったのだと受け止めています。

経済のグローバル化に伴い、日本国内だけの市場活動だけでは行き詰まってしまう会社がほとんどです。古い殻に閉じこもっているのではなく、国際市場に出ていくには、さらなる競争力も必要です。座して待っていても、展望は開けません。その意味で求められるのは、両方の文化のバランスです。どちらの文化が良い悪いという比較論ではなく、それぞれの国の企業風土に適したものを取り込んでいくことこそが成長のシナリオに必要なものだと思います。

いま、日本独自の「和の文化」に根ざしたビジネスは、世界的にも見直されており、その傾向は人材採用の場面でも顕著になってきました。表向きの顔こそ欧米化されているように見えるものの、根本の部分はこれまでと変わらない考え方を維持しています。そんなハイブリッドな日本型経営および人材の採用と育成が再評価されていることを知ることは、世界の行方を読み解く上で重要なヒントになり、自国の強みと課題を見直す機会となるはずです。

武元康明(たけもと・やすあき)
半蔵門パートナーズ 社長
1968年生まれ、石川県出身。日系・外資系、双方の企業(航空業界)を経て、19年の人材サーチキャリアを持つ、経済界と医師業界における世界有数のトップヘッドハンター。日本型経営と西洋型経営の違いを経験・理解し、企業と人材のマッチングに活かしている。クライアント対応から候補者インタビューまでを自身で幅広く手がけるため、全国各地を飛び回る。2003年10月にサーチファーム・ジャパン設立に参加、08年1月に社長、17年1月~3月まで会長就任。現在、 半蔵門パートナーズ代表取締役。大阪教育大学附属天王寺小学校の研究発表会のほか、東京外国語大学言語文化学部でのビジネスキャリアに関する講演などの講師としても活躍。著書に『会社の壁を超えて評価される条件:日本最強ヘッドハンターが教える一流の働き方 』など。
(取材・構成=岡村繁雄)
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