スマホに慣れている若い世代に、生産性を向上させるデバイスを

現在、グローバルのPC市場でシェア1位であるレノボ。その日本法人であるレノボ・ジャパンが横浜みなとみらいに構える大和研究所は、2004年にレノボがIBMのPC事業を買収したときに引き継いだ研究拠点だ。ビジネス向けノートPC“ThinkPadシリーズ”の開発拠点として知られる。YOGA BOOKのHaloキーボード開発に関わったレノボ・ジャパン 基礎研究・先端技術 部長 河野誠一氏と、レノボ・ジャパン 基礎研究・先端技術 専任研究員 戸田良太氏もIBM時代から大和研究所に在籍しており、レノボの買収に伴い移籍して、現在に至っている。

河野氏、戸田氏が在籍しているのは基礎研究・先端技術(R&T)と呼ばれる研究開発グループで、製品化される前の、新しい技術だけを専門に研究開発している。世界中にあるレノボの製品開発拠点に新技術を売り込みに行く、いわば社内ベンチャーのようなチームである。特に河野氏、戸田氏は、新しい入力方法(例えばキーボードなど)に関する開発を行っており、日々新しい技術を考えていたのだという。

2015年、その二人に、後に"YOGA BOOK"として発表されることになる新しい製品プランが飛び込んできた。スマートフォンやタブレットなど、デジタル機器をタッチで使うことが当たり前の若い世代に対して、PCに代わる高い生産性を実現できる機器を提供したいという意向があり、開発を進めた製品だという。

YOGA BOOKの「Haloキーボード」。普段は黒い平らな板だが、バックライトを入れるとキーボードが浮かび上がり、入力できるようになる。

YOGA BOOKは、タブレットとPCの中間に位置する製品だ。タブレットのように軽く、タッチ操作で使える一方、PCのようにキーボードを使った長文の文字入力もしやすい。こうした商品は、設計の詰めが甘いと、タブレットとしても、PCとしても使いづらい「中途半端」な製品になりがちだ。今回レノボは、「入力」に重点を置いて商品をつくった。

YOGA BOOKは、物理的なキーボードの代わりにペンタブレットにもなる薄いタッチキーボードを備えている。これは「板」のようなものなので、物理的なキーボードと違ってボタンやバネなどもなく、軽くて薄い。しかし、従来のタッチキーボードでは誤入力が増えやすく、ノートPCのように長文を入力するのは難しい。

「中途半端」ではなく「いいところ取り」の商品に仕上げるには、タッチキーボードで、物理キーボードに迫る“打ちやすさ”を実現しなくてはならない。ここを突破したのが、河野氏、戸田氏が研究している新技術だったのだ。

折りたたむと厚さ1センチ以下のタブレット、開けば薄型ノートPC。山形に折って立たせ、動画などを見るにも便利だ。690グラムと軽いので持ち歩きもラク。