ルースが彼に教えたマジックとは、(1)体を緩める、(2)頭の中の声を止める、(3)心を開く、(4)なりたい自分を描く、というもの。実はこの「心と体の扱い方」が、マインドフルネスのテクニックそのものなのだ。

『スタンフォードの脳外科医が教わった人生の扉を開く最強のマジック』ジェームズ・ドゥティ著 関 美和訳(プレジデント社)

ルースに教わった「マジック」を実践し、以前は想像もしなかった医学部進学を果たしたドゥティ氏。医者として、また起業家として成功をおさめ、人生の絶頂期を迎える。しかし、リーマンショックによって全財産を失ってしまい、状況は一変。ここで再び、ルースのマジックにより救われるのだ。

「ドゥティ氏の人生は、まさに、マインドフルネスが鍵となって切り開かれていると言えます」

そう語るのは、MiLI(一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート)代表理事の、荻野淳也氏。ビジネスパーソン向けのマインドフルネスを日本に紹介した立役者だ。

「彼の人生はまるで映画のようですが、マインドフルネスを実践するのは、決して特別なことではありません」

忙しい毎日をリセットする10分間

マインドフルネスの入り口として、5分、10分といった短時間で実践できる瞑想は、仕事に追われる毎日を送る人にこそ試してほしいという。

「マインドフルネス瞑想には、とっちらかった心をリセットし、集中力を取り戻す作用があります。誰もがすぐにそのような状態を経験できるわけではありませんが、筋トレと同様、継続することで少しずつ集中力を高めていくことは可能です。脳は、使えば使うほど成長する“神経可塑性”という性質を持っています。年齢に関係なく、習慣づければ誰でもその状態を享受できるようになるでしょう」

いわば、脳の「回路」を整える下準備のようなもの。基本的なプロセスは、次の通り。

椅子に座った状態で、姿勢を正してリラックスできる体勢を整え、目を閉じる。自身の呼吸に注意を向ける。そのうち、注意がそれる。そこで、注意がそれたことに気づく。最後に、それた注意を呼吸に戻す。――以上である。