2017年3月31日(金)

なぜ喫茶店はコーヒーを「ブレンド」するのか

dancyu 2015年10月号

文・松浦達也 教える人:「山下コーヒー」代表取締役 山下雅彦、「堀口珈琲」執行役員 小野塚裕之

日頃、何げなく使うコーヒー用語も、よくよく考えてみれば意外と知らないことだらけ。ブレンドは何のため? 焙煎の目的は? 素朴な疑問を、豆の達人2人に聞いた。

ブレンドってなに?

すべての居酒屋にビールがあるように。すべての定食屋に白メシがあるように。日本中の喫茶店にはブレンドコーヒーが欠かせない。だが、なぜに「ブレンド」なのか。どうしてみんな、混ぜるのか。

そんな疑問を数々の専門店に豆を卸す、山下コーヒーの山下雅彦社長にぶつけてみた。

「“お米”の世界では、有名な産地や銘柄を明記して販売される単一銘柄のものと、複数の産地や銘柄をブレンドして販売されるものがあるように、コーヒーでも単一銘柄とブレンドしたものがあります。単品では苦すぎたり、個性に欠けても、他のコーヒーをブレンドすることで、マイルドになったり、風味が上がる組み合わせがあります」

また新豆が収穫される出荷時には、古豆をブレンドして、味のブレを最小限に留めることもあるという。

「大半の生産国では年に一度7月~9月にコーヒーが収穫されるため、新豆(ニュークロップ)は風味がガラッと変わりますが、その変化を最小限にするために、生産国によっては前年に収穫された豆と新豆をブレンドすることもあります」

では高級豆ではどうか。スペシャルティコーヒーの専門店、堀口珈琲の小野塚裕之執行役員はこう語る。

「スペシャルティコーヒーのブレンドは欠点隠しというより、ブレンドでのみ実現できる味や香りを追求するものだと考えています」

普通の豆(コモディティ)とスペシャルティコーヒーでは同じ「ブレンド」でも狙いが変わる。生産者を指定して厳選した極上豆だからこそ、たどり着ける境地がある。

だが実際、自店のオリジナルブレンドを出す店はどの程度あるのか。

「自店でブレンドするお店は1割あるかどうか……」と、山下さん。

えっ……。

「喫茶店に限って言えば、世の中のお店はほとんど自分でブレンドしていません」と、小野塚さん。

という話は決してネガティブなものではなく、ブレンドや焙煎は専門の業者が行ない、喫茶店やカフェなどでは「抽出」に注力する。言うなれば、おいしいコーヒーのための“分業”という仕組みがある。

ちなみに、国内の喫茶店は、1980年代に15万軒を超えた後はゆるやかに減少し、現在では半分以下の約7万軒になってしまったという。

それでも、たとえ「ブレンド」と発声する機会が減ろうとも僕らは喫茶店に足を運ぶ。さあ次はどの店で「ブレンド」と注文してみようか。

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松浦 達也