マネジメントスキルはどうやったら身につくのか

【丹羽】制度・仕組みとしてはこういったものを採用すれば何とかなりそうです。一方、スキルの方は一朝一夕では行きません。そもそも「育成」に対するモチベーションがないと――つまり、育成スキルとか統括マネジメントスキルを勉強しなさい、と言っても、そんな暇があったら、自分の専門スキルを磨きたいわけですよね。そこで必要性を作る必要があります。

もう1つ気になるのは、創業(者)のスピリットが薄まっているというところです。本来そこが強ければ、もっと事業――法人顧客の経営について勉強するとか、自分の事業やチームについても「育てる」ということに関心を持つはずです。なぜ関心を持たないか? プロフェッショナル指向とか売り手市場という環境ももちろんあるのですが、根本的な課題はそこにあると思います。

【山崎】そうですね……。プロフェッショナル指向というところにも関連すると思うのですが、売る人・企画する人・作る人、それぞれのゴールを達成することがミッションとして大きくて、結果として(マネジメントへの意欲が)薄まっていると思います。

【丹羽】そこに気付かれているのは素晴らしいと思います。このままだと問題解決は難しそう、とお伝えしたのは、何か仕掛けを導入すれば直接それが機能する、と言えるほど簡単ではないという意味なのです。解決の前には何段階かのハードルがあります。例えばいまのお話は、ミッションの定義を変えなければならない、ということになりますね。また採用の仕方を変えないと、どんな育成プランを作っても上手く行かないという面もありますが、いかがでしょうか?

【山崎】なるほど、そうですね……。

【丹羽】いまいる人に育成スキル・統括マネジメントが身につく、というのはすぐには難しいと思います。先ほど仰ったようにサプライチェーン毎に組織・機能が分かれていて、各部のミッションの達成が重視されている状態であれば、チーム全体を見るということに対してさほど関心がないというのは、自然なことにはなってしまいます。

【山崎】そういうことが必要だ、という問題意識を持った社員が少なくとも何人かはいるという状態を作らないといけないですね。そういう人がメンターとなり、いろいろなところに影響力を及ぼしているという風に……。

【丹羽】いいですね。

【山崎】そういう組織的な土壌があれば、育成やマネジメントに長けた人を採用するということに対する抵抗感、ストレスもなくなりそうです。先に外から持ってきてしまうと、中にいる社員たちにとっては、「なぜ?」とか「あの人がやっていることはよくわからない、自分たちには関係ない」となってしまいますから。

【丹羽】その通りですね。