自身もかつてファンドマネジャーとして5000億円もの日本株を運用し、国際経済の裏表を知り尽くした波多野聖氏。ディーラーとしてのリアルな経験が生かされた経済エンターテインメント小説『メガバンク最終決戦』が、WOWOWでドラマ化された。

波多野 聖(はたの・しょう) 1959年、大阪府生まれ。一橋大学法学部卒業後、農林中央金庫、野村投資顧問、クレディ・スイス投資顧問、日興アセットマネジメントなどで資産運用業務に携わる。著書に『銭の戦争』シリーズ、『悪魔の封印 眠る株券』『本屋稼業』など。

作中、「日本国債暴落」というショッキングな事件から話は思わぬ方向に転がっていく。

「国債の暴落は、明日起こるかもしれない日本の危機です。それが起きれば、世界はこれまで誰も経験したことのない経済的なクラッシュ状態になります。ゼロ金利からマイナス金利と呼ばれる状態になり、日本はその危機への階段をまた一段上ったといえるでしょう。すべてがフィクションだけど、書いてあることは、過去も未来も含めて非常にリアルなんです」

波多野氏が追求した「リアル」は、それだけではない。バブル崩壊以降の日本の銀行の「生き残りをかけた戦い」の陰で、銀行マンたちがどのような気持ちで働いてきたのか。組織や人にも丁寧にフォーカスしていった。

「銀行は絶対に潰れないという神話が崩壊し、福利厚生が取り上げられ、給料も減った。銀行マンにとって過去20年は『想定外』の連続だったでしょう。私は、そこで歯を食いしばって戦った人たちの、いい意味でしたたかな姿を描きたかった。銀行マンが感情移入しやすいのは、主人公の桂とタッグを組むヘイジだと思います。派手さはなくても、確実に生き残っているわけですから」

いっぽう桂は、ディーラーとして腕を買われて役員にまで上り詰めた人物だ。当然、波多野氏の思い入れも強い。「桂は、私が銀行に残って役員になっていたらこうなりたかった、というある意味理想の上司像です。どんな行動にも覚悟があるし、『責任は全部自分がとる』という男気がある。昔はああいう人間が多かったですね。

桂は大盛りのナポリタンですが、私は毎朝大盛りの牛丼を食べて出勤していました。ガツッと食べて完全に脳がまわる状態にしておかないと、コンマ1秒の判断力に影響するんです。それが下手をすると数億円のマイナスにつながってしまう。日常の細部に表れる、男たちの緊張感のようなものも感じてもらえれば。どの登場人物も少しずつ私の分身なんです」

(村上庄吾=撮影)
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