一般の会計ソフトとクラウド会計ソフトはどう違う?

【田原】サービスの話も聞かせてください。僕は会計がまったくわからないのですが、一般の会計ソフトと、クラウド会計はどこが違うのですか。

【佐々木】freeeと一般の会計ソフトの大きな違いは2つあります。クラウド会計は、銀行やクレジットカードのWeb上の明細を自動で取り、人工知能で分類します。たとえば、「東京ガス」という明細があれば、これは水道光熱費と自動で分類していくわけです。そうすると、それまで領収書や通帳を見て手打ちしていたものが、放っておいてもできていく。それが一つです。

【田原】もう一つは?

【佐々木】一般の会計ソフトは、起きた取引を後から入力します。でも、取引の前には請求書の発行や受取があります。そうした請求書をfreee上で管理でき、自動的に帳簿に記録されます。つまり帳簿をつける前のレベルだけやってもらえれば、あとはよしなに帳簿をつくります。

【田原】それらが可能になることで、どのくらい労力がかからなくなるのですか?

【佐々木】およそ50分の1です。10日かかっていた作業が数時間でできてしまいます。

(上)freeeのホーム画面(下)freeeのファイルボックス画面。領収書を写真に撮ってアップロードすると登録される。

【田原】クラウド会計のサービスは、もともとアメリカから?

【佐々木】じつは一番進んでいる国はニュージーランドです。ニュージーランドで2006年にクラウド型会計ソフトをつくり、それを専業で始めた会社が現れました。ニュージーランドでは、すでにクラウド型が100%。この会社がアメリカにも進出したことで、もともと会計ソフトを売っていた大手のインテュイットも慌ててクラウドへの対応を進めました。いまはアメリカでも急速に広がっています。

【田原】日本はどうですか。

【佐々木】いまのところクラウド型は20%くらいです。

【田原】反応はどうですか。

【佐々木】じつは製品をリリースする前に、経営者の方たちに意見を聞いたのです。すると、たいていの人は「いまは満足しているから、こんなものいらない」という。ところが公開したところ、一部の人たちが「これ、すごい」と言ってくださって、それがTwitterやFacebookで広がりました。

税理士は敵でなくパートナー

【田原】これを使うと会計処理の作業が楽になるわけですよね。税理士さんから敵視されたりしないのですか。

【佐々木】税理士さんはパートナーですね。僕たちはまずエンドユーザーさん、つまり実際に使う中小企業の方にフォーカスしてマーケティングをしました。その結果、利用してくださった企業側から、今度は会計事務所さん側に「クラウド会計に対応してほしい」という要望が出るようになった。その時点で僕たちも会計事務所さん向けに提案をし始めました。具体的には、「freeeを会計事務所のお客さんが導入してくれたら、会計事務所の作業負担は軽くなって、もっと付加価値の高いコンサルティング業務に集中できますよ。」と提案して、パートナーになっていただくのです。

【田原】税理士さんは理解してくれますか。

【佐々木】みなさん、この流れはもう止められないことはわかっていて、この流れとどう向き合うのかということを真剣に考えていらっしゃいます。僕たちもソフトウェアを売るパートナーとして見ているわけではありません。会計事務所さんに向けて、新しいビジネスモデルへの転換を提案しているという認識です。

【田原】freeeの料金はどうなっているのですか。

【佐々木】毎月、ユーザーさんに利用料をいただいています。一度導入されるとそのまま使い続けるてくださるお客様が多いので、いまはどんどん売上が増えています。

【田原】いま御社は5年目ですね。売上はどれくらいですか。

【佐々木】非公開ですが、契約いただいている事業所は60万事業所になりました。

【田原】ちなみに社員は何人ですか。

【佐々木】従業員300人ぐらいの規模の会社です。