ノーリスクの賃貸経営など存在しない

このトラブルの根幹には、「借地借家法」と「民法」の解釈の問題がある。借地借家法は、賃貸人と賃借人の力関係に鑑み、弱者となりやすい賃借人の保護を念頭に置いて成立した法律であり、賃借人に賃料減額請求権を認めている。また民法では、賃借人が建物の維持のために必要な修繕を行った場合、賃貸人に必要費償還請求権を有すとしている。

サブリースの場合、賃借人は事業会社であり、賃貸人はオーナーである。つまり、サブリース会社から賃料減額請求や修繕費の拠出請求があったとしても、オーナーは拒むことができないということになる。しかし現実には、賃借人である事業会社は圧倒的な情報量と交渉力を有す一方、賃貸人であるオーナーは知識と経験の薄い契約弱者であることが多く、「企業からオーナーへの不当な要求」として、上述のトラブルが生じている。こうしたリスクがあることを、サブリースでは肝に銘じておかねばならない。

このようなことを踏まえると、そもそもノーリスクの賃貸経営など存在しないと考えるべきだろう。賃貸経営は「立地と間取り」で決まる。例えば、駅から遠く、没個性的な間取りの部屋をいくら建てても入居者は集まりにくいと思われる。相続税評価では、「貸家」はアパートに限らず、「貸しオフィス」「貸し倉庫」「設備を他の事業主に貸して事業を行わせる建造物(例えば社会福祉施設)」なども含まれる。このため、一口に賃貸経営といってもさまざまな活用方法があり、これらを比較検討し、おのおの事業計画を立ててみることが重要である。

また「駅から遠く活用が難しい」ということであれば土地を売却し、大都市圏の土地に買い換える選択肢も入れるべきだ。例えば、不便な地方の土地300平方メートルを売り、都心の100平方メートルの土地を購入して賃貸物件を建てれば、立地において有利になる可能性が高くなる。さらに相続税では「小規模宅地等の特例」として貸付事業用宅地に減額を認めているが、その限度面積は200平方メートルであり、購入した100平方メートルの土地は、その恩恵を十分に享受できる。

いずれにしても、賃貸経営にリスクはつきもの。相続税対策というだけでなく、幅広い視点から検討することをオススメする。

藤宮 浩
フジ総合グループ(株式会社フジ総合鑑定/フジ相続税理士法人)代表
株式会社フジ総合鑑定 代表取締役
埼玉県出身。1993年、日本大学法学部政治経済学科卒業。95年、宅地建物取引主任者試験合格。2004年、不動産鑑定士試験合格及び登録。12年、フィナンシャルプランナーCFP登録。04年に株式会社フジ総合鑑定代表取締役に就任し、相続不動産に強い不動産鑑定士として、徹底した土地評価を行うことで有名。主な著書に税理士・高原誠との共著である『あなたの相続税は戻ってきます』(現代書林)『日本一前向きな相続対策の本』(現代書林)、不動産鑑定士・小野寺恭孝との共著である『これだけ差が出る 相続税土地評価15事例 基礎編』(クロスメディア・マーケティング)。セミナー講演、各種メディアへの出演、寄稿多数。
高原 誠
フジ総合グループ(株式会社フジ総合鑑定/フジ相続税理士法人)副代表
フジ相続税理士法人 代表社員
東京都出身。2005年税理士登録。06年、税理士・吉海正一氏とともにフジ相続税理士法人を設立、同法人代表社員に就任。相続に特化した専門事務所の代表税理士として、年間600件以上の相続税申告・減額・還付業務を取り扱う。セミナー講演、各種メディアへの出演、寄稿多数。