【宮内】ビジネスマンで言うと、40代は蓄積の時代です。日本の社会人は白人社会より10歳ぐらい遅咲きで、知力、体力が最も充実する45~55歳くらいに最初の満開期を迎えます。ただ、花を咲かせるには栄養が必要。40代になると結果も求められるけど、時間を有効に使ってしっかり勉強もしておかないといけない。そういう向上心が大切ですが、イチロー君はそういう気持ちを失っていないように見える。

【イチロー】必死です。プレーヤーとして終わることは僕にとって「死」と同じです。そんなにうまくいくわけがないのですが、50歳までプレーして、51歳で消える。これが理想です。

【宮内】冗談じゃない。現役を引退したら、きっとビヨンドベースボールが出てきます。僕はオリックスを自分の会社だと思っているから、自分で自分をクビにせざるをえないときがくるのが死ぬより怖かった。でも、突き詰めていくと、最後は会社が残ればいいじゃないかと思えました。イチロー君もきっと同じでね。今は「野球がなくても俺がある」と思えないかもしれないけれど、いつか野球を失って悩んだときに、その向こうに何か見えてきます。そして、それは野球をプレーするのとは別のおもしろさがあるはず。

【イチロー】最後に一つお聞きしていいですか。もう一度生まれ変わったら、同じ人生を歩みたいと思います?

【宮内】思わない。まったく違うことをやりたい。イチロー君は?

【イチロー】絶対嫌です。

【宮内】じゃ、企業経営をやればいい。僕がプロ野球選手をやるから。二軍の補欠でいいから、試合に出たい(笑)。

【イチロー】ステキですね。宮内オーナーがそんなふうに野球を思ってくださっているのですから、僕はやはり野球を大切にしていきたいです。

イチロー
1973年、愛知県生まれ。92年愛工大名電高からドラフト4位でオリックス入団。マリナーズ、ヤンキースを経て、2015年からマーリンズでプレーする。180cm、77kg
宮内義彦
1935年、兵庫県生まれ。58年関西学院大学商学部卒業。60年ワシントン大学経営学部大学院修士課程修了。現在、ドリームインキュベータ、ACCESSなどの取締役も務める。
(村上 敬=構成 大沢尚芳=撮影 時事通信フォト=写真)
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